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 派遣・請負・出向Q&A

派遣、請負、出向などについて、基本的でよくあるご質問にお答えします。


Q: 派遣といってもいろいろな意味で使われているようですが、実際のところ何なのでしょうか。「労働者派遣法の派遣」と他の派遣との違いがあるのでしょうか?

Q: 適正な労働者派遣を行なっていない場合、「労働者供給事業」に該当し違法となる場合があると言われました。「労働者供給事業」とはどのようなものなのでしょうか?

Q: 派遣先から、さらに別の会社に派遣するいわゆる「二重派遣」を行なうことは許されるのでしょうか?

Q: 出向と派遣とは、どこに違いがあるのでしょうか?

Q: 「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」との違いは何でしょうか?

Q: 請負契約・業務委託契約とはどのようなものでしょうか。労働者派遣との違いはなんでしょうか?

Q: 派遣労働者に時間外労働・休日労働させる場合に三六協定は、派遣元・派遣先のどちらが締結し届出するのでしょうか? また、派遣先が派遣労働者に対する時間外労働・休日労働を命じることについて、違法とはならないのでしょうか?

Q: 派遣といってもいろいろな意味で使われているようですが、実際のところ何なのでしょうか。「労働者派遣法の派遣」と他の派遣との違いがあるのでしょうか?
A: 派遣という言葉は法律用語ではなく、いわゆる労働者派遣法が成立するまで派遣とは種々の意味で使われてきました。 労働者派遣法にいう派遣とは、図Aのとおり、自己の雇用する労働者を第三者の下に送り込み、その指揮命令下で第三者の業務を行わせる形態をいうとされている(派遣法第2条1号) この派遣法以外の「派遣」の中には、いわゆる「店員派遣」や「応援派遣」などが含まれますが、その定義はなく、用いる者によってその内容が異なるといっても過言ではありません。


  一般に「店員派遣」とは、図Bのようにスーパーマーケットやデパート等において、その製造会社の社員がその製品の売り場において売却するという例が挙げられます。その場合は、その社員はスーパーマーケットやデパート等においてその現場の責任者の指揮命令下で、そのスーパーマーケットやデパート等の業務を処理しているわけではありません。すなわち、その場合には、その社員はその売り場を借りて自社の製品を売却しているのであり、スーパーマーケットやデパート業者の指揮命令を受けて、スーパーマーケット、デパートの業務を処理しているのではありません。この場合の店員派遣は、一時的であれば出張、継続的であれば転勤になるものと考えられます。

  一般に「応援派遣」とは、一企業内の一事業場の人員不足、能力不足のために、他の事業場から技術者等の社員を臨時に応援するというものです。これは、派遣とはいいながら、出張または転勤といえます。 さらには、「応援派遣」の中には、他の関連会社の応援に行かせることがありますが(図C―1、2)、その場合にも、他の会社の指揮命令に入るのか(図C−1)、自社の指揮命令下で作業するのか(図C−2)によって変わってきます。前者の場合は労働者派遣となりますが、派遣業務に該当するのか問題があります。もし、仮に、派遣業務に該当しないのであれば「出向」として行わざるを得ません。後者の場合には、会社としては他の会社と請負または業務委託を行うこととなり、そこに赴くことは出張または転勤ということになるのです。

    
 
Q: 適正な労働者派遣を行なっていない場合、「労働者供給事業」に該当し違法となる場合があると言われました。「労働者供給事業」とはどのようなものなのでしょうか?
A: 職業安定法は、5条6項で、「この法律で労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」をいうとされ、「労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする」と規定しています。すなわち、労働者供給の一つの類型から労働者派遣という形態を独立のものとして取扱い、労働者供給から除外することにしたのである。すなわち、労働者派遣業が一定の必要の下に労働者派遣法の規制下で認められることになったが、その際、従来は禁止の対象となっていた労働者供給事業ではなくなった訳です。

  なお、労働者派遣業としての許可や届出をなしていない場合の違法な派遣については、未だに労働者供給事業に該当し許されないと誤解しやすいが、そうではなく、労働者派遣という類型自体が労働者供給事業ではなくなったということである。
  労働者供給事業は、図Aの四類型に分類することができましたが、このうちCについては労働者派遣事業として労働者供給事業の対象外となったのです。
  なお、労働者供給事業は、労働組合が労働大臣の許可を得て行う場合以外は禁止されています(職安法45条)
   
 
Q: 派遣先から、さらに別の会社に派遣するいわゆる「二重派遣」を行なうことは許されるのでしょうか?
A: 二重派遣とは、派遣先が派遣元事業主から派遣を受けた派遣労働者をさらに、業として第三者に派遣することをいいます。そもそも労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を第三者の指揮命令下で働かせること」をいいます(図A参照)。
二重派遣の場合、派遣先は、その派遣労働者と労働契約を締結しているわけではなく、単なる指揮命令権しか有してないのであり、それにもかかわらず、その派遣労働者を別の会社=第三者に派遣することは、その権限を逸脱し許されないことになると考えられます(図C参照)。

         

すなわち、その派遣先は、事実上の支配下にある労働者を第三者に派遣し、その指揮命令下に労働に従事させることになるので、まさにこれは労働者供給に該当することになり(職安法5条6項)、それを反復継続し、またはその意思を持って行うことは労働者供給事業に該当し、違法となるのです(図B参照)。
 
労働者派遣法は、従来、労働者供給に該当するものの中から、雇用関係という基礎が堅固なものについてはその労働者の雇用条件が安定しており派遣しても問題ないとして、労働者派遣を抜き出して一定の条件の下に法的に認知することになったわけです。職安法も、「この法律で労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする」(同法5条6項)と改正しています。

この二重派遣は、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」(派遣法2条1号)である労働者派遣ではないことになり、したがって労働者供給に該当し、業として行えば職安法違反(同法44条)となり刑罰に処せられるということになるのです(同法64条4号)。
 
Q: 出向と派遣とは、どこに違いがあるのでしょうか?
A: 在籍出向とは、元の会社に在籍しながら、他の会社にも在籍して就労する雇用形態をいう(図A参照)。この在籍出向は二重の雇用関係になります。
  これに対し、労働者派遣法に基づく派遣とは、元の会社に在籍しながら、他の会社に赴いてその会社の指揮命令下で働く形態をいいます(図B参照)。
  いずれも、元の会社に在籍しながら、他の会社の指揮命令下で就労することは共通しており、外形的に見ると差異はないことになります。


しかしながら、結局、その就労する他の会社との関係でも身分関係を取得するか否かという点が違うのです。
  すなわち、出向社員の場合は出向先でも人事異動の対象となり、したがって配転、転勤や昇進・降職などを命ぜられることになります。また、その勤務態度・出勤状況、成績などについての査定を受けることになりますし、職場を乱す行為をすれば懲戒処分の対象となるのです。

これに対し、派遣社員の場合は、派遣先会社との関係は就労関係のみであるから、派遣先からの人事異動も査定もありません。単に勤務態度や出勤状況、成績が悪ければ、派遣契約に基づき派遣先から派遣元へと注意をするよう連絡が行ったり、代替要員を派遣するように派遣元たる企業に対して要請することになります。
 
Q: 「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」との違いは何でしょうか?
A:  特定労働者派遣事業とは、常用雇用される労働者のみを以って行われる労働者派遣事業をいい、一般労働者派遣事業とは、特定労働者派遣事業以外のものをいう。したがって、「常用雇用」の労働者が問題となるわけであるが、この常用雇用労働者というのは、労働契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいい、及び身体障害者雇用促進法14条の「常時雇用する」と同義と解されており、次の(1)〜(3)のいずれかに該当するものを言います。

(1) 期間の定めなく雇用されている者
(2)一定の期間(例えば1ヶ月、6ヶ月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復更新されて事実上@と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者または採用のときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
(3)日日雇用される者であって、雇用契約が日々更新されて事実上(1)と同等と認められる者。
   ((2)の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者または採用のときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者)

  なぜ、一般労働者派遣事業と特別労働者派遣事業とを区別する必要があるかというと、派遣労働者の雇用管理、雇用の安定等を考慮しなければならないからなのです。すなわち、特定労働者派遣事業の場合、労働者は「常用雇用」を保障されており、労基法等により労働条件も保護され、雇用の安定も図られているため、比較的緩やかに事業を認めても弊害が少ないものと考えられて「届出」でよいのです。これに比し、一般労働者派遣事業においては、常用雇用の派遣労働者のみでなく、登録型の派遣労働者や、雇用されているけれども常用でない派遣労働者もいるのであり、雇用の安定が十分でないおそれがあるため、経営基盤、過去の実績を重視して「許可」を条件とすることとなっています。
 
Q: 請負契約・業務委託契約とはどのようなものでしょうか。労働者派遣との違いはなんでしょうか?
A: 派遣と請負との違いは、図Aと図Bのように理論上は明確になっています。請負契約は仕事の完成を目的として注文主が請負人に仕事の完成を依頼し、それを受け請負人は自らの裁量を持って請負業務を遂行し仕事を完成させ、その対価としての報酬を得ることになります。この請負契約の場合には、その請負人(=契約の当事者)以外に労働者がいることは契約の要素となっておらず、契約を遂行していく過程において請負人がその労働者を使用するか否かは裁量にゆだねられています。
業務委託契約とは、請負契約と類似しているが、仕事の完成を目的とする契約ではなく、事務処理を目的とする点が異なる。そして報酬は、一定の事務処理量に応じて支払われるのが通常です。

    
 
  これに対し、労働者派遣の場合には、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」(派遣法2条1号)をいい、図Aのように派遣労働者が、派遣元と事業主と派遣先と同様に、表面に登場しており契約の不可欠の当事者となっています。また、請負契約のように仕事の完成を目的とするのではなく、派遣先のために、派遣先の指揮命令の下に、派遣労働者が労務の提供をすることを目的としています。

  このように、労働者派遣契約と請負契約・業務委託契約は契約類型がまったく異なっているが、実態は労働者派遣でありながら、労働者派遣法の規則を免れるために、形式を請負契約にすることが現在世間で言われている「偽装請負」なのです。
 
Q: 派遣労働者に時間外労働・休日労働させる場合に三六協定は、派遣元・派遣先のどちらが締結し届出するのでしょうか? また、派遣先が派遣労働者に対する時間外労働・休日労働を命じることについて、違法とはならないのでしょうか?
A: 労働者に、1日8時間または1週間40時間を越えて労働させる場合、または、毎週1日、4週4日の休日に労働させる場合には、事業場ごとに、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、それがないときは過半数を代表する者との書面による協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届出なくてはならない。そこで、協定を締結し、労働基準監督署長に届出るのは、派遣元事業主か派遣先かということになるが、この義務を負うのは、派遣元事業主にある(法44条2項)。

したがって派遣元の事業主において三六協定を締結しなくてはならないことになるが、労働者派遣事業を目的とする会社では、労働者の多くは派遣している状態であり、過半数を組織する労働組合があればともかく、過半数を代表する労働者と締結する場合、真の意味で過半数を代表する者であるのか疑問の生じるところである。そのため、派遣元事業主も三六協定を結ぶ場合、派遣労働者各個人にも締結しようとする三六協定の内容を事前に告知できる方法を考慮すべきでありましょう。

  また、三六協定を締結した場合に、「派遣先は、その派遣労働者に時間外労働・休日労働を命じることができる」のでしょうか。これについては、(1)三六協定によって時間外労働業務が発生するという見解、(2)時間外・休日労働については、三六協定があっても労働業務は発生せず、労働者の個々の個別的具体的同意が必要であるとする見解、(3)三六協定プラス就業規則・労働協約に時間外・休日労働業務が明記されていればよいとする見解、があったが、日立製作所武蔵工場事件(最高裁平成3年11月28日判決)により、(3)の立場が確定しているので、実務としては(3)に従えばよいものと考える。

もちろん、この場合の就業規則の定めとは派遣元における就業規則の定めとなりますから、派遣元の就業規則において、派遣労働者が時間外労働・休日労働をすることがある旨を定めておれば、36協定の締結とあいまって、可能であるといえるでしょう。

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