役立ちNEWS解説 2007年9月12日 

 平成19年10月から雇用保険法が改正されます!


平成19年10月1日より、従来の被保険者区分(「短時間労働被保険者以外の一般被保険者」と「短時間労働被保険者」)が今回の改正により一本化されました。さらに、退職後に受け取ることのできる基本手当(いわゆる「失業手当」)の受給資格要件も改正となります。また、育児休業給付や教育訓練給付についても変更があります。

(1) 被保険者区分の一本化

これまで週所定労働時間により被保険者区分が「短時間労働被保険者(週20〜30時間)」と「一般被保険者(週30時間以上)」の2つに分かれていました。今回、この被保険者区分がなくなり、一般被保険者として一本化されることになりました。

一般被保険者 短時間労働被保険者
短時間労働被保険者以外
一般被保険者

*65歳以上の高年齢継続被保険者についても同様の考え方となります

(2) 受給資格要件の変更

今まで被保険者区分により決まっていた受給資格要件が、平成19年10月からは、離職理由により決まることになりました。

被保険者区分 必要な要件 (必要な被保険者期間)
短時間労働被保険者 離職日以前2年間に12ヶ月以上
(各月11日以上賃金の支払いが必要)
短時間労働被保険者以外の
被保険者
離職日以前1年間に6ヶ月以上
(各月14日以上賃金の支払いが必要)

離職理由 必要な要件 (必要な被保険者期間)
自己都合等による退職 離職日以前2年間に12ヶ月以上
(各月11日以上賃金の支払いが必要)
倒産や解雇等による退職 離職日以前1年間に6ヶ月以上
(各月11日以上賃金の支払いが必要)

実務上の留意点

従前なら6ヶ月勤めれば失業給付(基本手当)はもらえると思っていたところ、被保険者期間が6ヶ月以上12ヶ月未満従業員の退職については、その離職理由により、基本手当が受給できるかどうかが分かれることになります。
これにより、離職理由を「解雇扱いにして欲しい」など「特定受給資格者」(=失業給付が手厚く支給される受給資格者)となるような扱いにしてほしいという要望が増加することが予想されますので、離職時の対応には配慮するようにして下さい。

また、今回の法改正に伴い、新たに「特定受給資格者」の定義として、次の2点が改正されました。
①1年未満の期間の定めのある労働契約の締結に際し、労働契約が更新されることが明示された場合において、労働契約が更新されなかった離職者(1年以上引き続き同一の事業主に雇用されている場合は除く)
②被保険者期間が6ヶ月以上12ヶ月未満で、正当な理由のある自己都合による離職者


②の正当な理由については、以下のようなものがあげられています。

【正当な理由とは】

(1)体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

(2)妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者

(3)父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した場合

(4)配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した場合

(5)次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者

  1. 結婚に伴う住所の変更
  2. 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
  3. 事業所の通勤困難な地への移転
  4. 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
  5. 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
  6. 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
  7. 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避

(6)その他、企業整備による人員整理等(一定要件あり)で希望退職者の募集に応じて離職した者等

<参考リンク> ※「特定受給資格者」の範囲について(厚生労働省)


(3) 職場復帰給付金の給付率引上げ

職場復帰給付金」とは、育児休業を取得した後、職場復帰後6ヶ月してから支給される給付金で、
【育児休業給付金を受けることのできる支給日数×休業開始時賃金日額×給付率】で計算されます。
今回の改正は、平成19年3月31日以降に職場復帰した被保険者=平成19年10月1日以降に職場復帰給付金が受給できる被保険者について、上記給付率が、10%から20%にアップしました。

(4) 基本手当の算定基礎期間からの育児休業期間の除外

平成19年10月1日以降に育児休業を開始する被保険者から、育児休業基本給付金を受けた期間は、失業給付(基本手当)の給付日数(=何日分支払われるかということ)についての算定基礎期間から除外されることになります。

実務上の留意点

基本手当の給付日数の算定基礎期間との調整により、育児休業給付を受けた被保険者は、年齢や被保険者期間によって、給付日数が従来よりも減る場合があるため、あらかじめ従業員への説明をしておく必要があります。例えば以下のようなケースです。


●年齢:31歳
●被保険者期間:5年2ヶ月
●離職理由=解雇による離職

育児休業給付を
受けていない
算定基礎日数
=5年2ヶ月
所定給付日数
=180日
       
育児休業給付を
10ヶ月間受給
算定基礎日数
=4年4ヶ月
所定給付日数
=90日

 

(5) 教育訓練給付の要件等の変更

教育訓練給付については、被保険者期間が1年以上での受給が可能となった反面(ただし初回のみ)、5年以上の被保険者期間を有する人は、従来より支給が減ることになりますので、注意が必要です。

被保険者期間 支給率(上限額)
3年以上5年未満 20%(上限10万円)
5年以上 40%(上限20万円)
被保険者期間 支給率(上限額)
3年以上 20%(上限10万円)
※初回に限り被保険者期間1年以上で受給可能

 


今回の改正における被保険者区分の一本化は、助成金にも影響があります。例えば、「特定求職者雇用開発助成金」については、被保険者についての区分はなくなりますが、同じ被保険者の中でも短時間労働者と、それ以外の労働者で支給額が異なることが発表されています。しかしながら、法改正が影響する支給申請時期は、平成20年4月以降となるので、申請手続き上どうすればよいかなど、実務的な詳細については、まだまだハローワークの方へも情報が降りてきていないというのが現状のようです。

その他、対象者が「一般被保険者」であることが要件であった他の助成金について影響してくると思いますので、詳細がわかり次第、またお伝えします。