役立ちNEWS解説 2007年11月14日 

 改正パートタイム労働法が施行されます


平成20年4月に「改正パートタイム労働法」が施行され、主に以下の4点について改正が行われます。

  • ①均衡のとれた待遇の確保の促進
  • ②労働条件の文書交付・説明義務
  • ③通常の労働者への転換の推進
  • ④苦情処理・紛争解決援助

人事労務担当者が留意すべき重要度の高い順に説明していきます。

均衡のとれた待遇の確保の促進

〜パートにも賞与・退職金を支払わなければならなくなるの!?〜


通常労働者と同視すべきパートタイム労働者に対し、Ⅰ.賃金、Ⅱ.教育訓練、Ⅲ.福利厚生について、差別的取扱いが禁止されます。
通常労働者と同視すべきかどうかの判断基準は、① 職務、② 人材活用の仕組み、③ 契約期間です。正社員と同視すべきとまではされないパートタイム労働者については、正社員との均衡待遇に努めること(つまり努力義務)となります。
そして、この均衡待遇を確保の態様については、パートタイム労働者を4つのタイプに区分されています。

  Ⅰ.賃金 Ⅱ.教育訓練 Ⅲ.福利厚生
パートタイム労働者のタイプ 職務関連賃金
・基本給
・賞与
・役付手当等
左以外の賃金
・退職金
・家族手当
・通勤手当等
職務遂行に必要な能力を付与するもの 左以外のもの(ステップアップを目的とするもの) 健康の保持又は業務の円滑な遂行に資する施設の利用 左以外のもの(慶弔見舞金の支給、社宅の貸与等)
職務(仕事の内容及び責任) 人材活用の仕組み(人事異動の有無及び範囲) 契約期間
Aタイプ=同視すべき者
同じ 全雇用期間を通じて同じ 無期or反復更新により無期と同じ
Bタイプ=職務と人材活用の仕組みが同じ者
同じ 一定期間は同じ 有期
Cタイプ=職務が同じ者
同じ 異なる 有期
Dタイプ=職務も異なる者
異なる 異なる 有期

◎・・・短時間労働者であることによる差別的取扱いの禁止
○・・・実施義務 ●・・・配慮義務
□・・・同一の方法で決定する努力義務
△・・・職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する努力義務

この表から明らかなように、”差別的取扱いの禁止”となっているのは、Aタイプのパートタイム労働者だけです。Aタイプパートタイム労働者については、例えば、正社員と同様の給与体系にし、賞与や退職金についても支給を行う方向で検討をする必要が出てくるでしょう。正社員と共通の人事制度などの導入も検討しなくてはならないでしょう。小売業や飲食業など、パート活用が進んでいる場合には、この改正が企業の人事労務管理に大きな影響を与えることは必至です。


さて、このような対応を迫られるかどうかについては、「通常労働者と同視されるパート労働者かどうか」が実務上のポイントになってきます。その判断基準である@〜Bについては、おおよそ次のように判断します。

  • @職務・・・職務内容や責任が正社員と同じか。
  • A人材活用・・・正社員と同様に配置転換などの人事異動があるか。
  • B契約期間・・・期間の定めがない、又は期間の定めがないと同様の取扱いになっているか。

これらの要件が正社員と同様であれば、正社員と同視されます。しかし、逆にいえば、これらの要件を満たさない場合は、正社員と同視されないパート労働者となり、差別的取扱いの禁止を適用されません。


よって、事業主様としましては、パート労働者の位置づけを明確にする必要があるのです。正社員と同様に今後も働いて欲しいパートタイマーは、法律に基づき、正社員と同様の取り扱いとして、よりがんばってもらうこととします。あくまでパートはパートとして、正社員と同等の扱いはできないということであれば、Aタイプのパートにはしないということです。

Aタイプとならないための方法としては次のようなことが考えられるでしょう。

  • @正社員と職務を一部でも変える。(例:販売業務は同様に行うが、売上の締めについては、パートにはさせない。清掃はパート担当とするなど)
  • A配置転換に差をつける。(例:パートは、地域限定、店舗限定などとする)
  • B契約更新手続きを厳格にする(例:自動更新をやめて、有期雇用としての契約書を整備し、都度更新手続きをとる)

これらのひとつでもきちんとしておけば、Aタイプには該当しません。


なお、この法律が適用される「パートタイマー」とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用される正社員に比べ短い労働者のことであり、正社員と同等の労働時間で勤務する「フルタイムパートタイマー」は除かれています。では、短時間パートには、均衡待遇を確保しなければならないのに、フルタイムパートタイマーについては考えなくてもいいというおかしな理論が通るのか?といいますと、法律では定められておりませんが、参議院付帯決議において、この法律の適用を考慮すべきであることが言われています(とはいえ、法律上の規定ではないことには変わりません。)



労働条件の文書交付及び説明義務 

〜雇い入れの際は、労働条件を文書などで明確に!〜

改正パートタイム労働法では、事業主に対して、パートタイマーの労働条件に関する文書交付に際して、3つの事項に関して義務化され、さらに、労働条件についての説明義務も規定されました。

 

労働基準法で文書交付を義務づけるもの(※後記参照)のほか、昇給、退職手当、賞与、安全衛生、職業訓練などに関する事項について文書の交付により明示するように努める。(努力義務)


・労働基準法の義務に加え、
① 昇給の有無
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
につき文書の交付等による明示を義務化

・その他安全衛生、職業訓練等に関する事項は引き続き努力義務 (努力義務)

待遇の決定に当たって考慮した事項の説明の義務化


さて、労働基準法15条及び施行規則5条において、書面によって明示すべき事項として定められているのは、以下の5つです。

  • ①労働契約の期間
  • ②就業の場所・従事すべき業務
  • ③始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、および就業時転換に関する事項
  • ④賃金の決定、計算・支払いの方法および賃金の締め切り・支払いの時期
  • ⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)

つまり、これらの事項については、そもそも正社員であろうとパートであろうと、文書での明示及び交付が必要とされているのです。
加えて、改正パートタイム労働法では、左記の3点についても文書の交付等による明示を義務化しており、この違反については、過料(行政罰に対する罰金)10 万円課せられます。

また、パートの待遇について雇用後にパートタイマーから求めがあったときには、その待遇の決定をするに当たって考慮した事項を説明することが義務付けられました。説明義務が課せられる事項には以下の項目があります。

  • ①労働条件の明示
  • ②就業規則の作成手続
  • ③待遇の差別的取扱い
  • ④賃金の決定方法
  • ⑤教育訓練
  • ⑥福利厚生施設
  • ⑦正社員への転換を推進するための措置

以上のような点を考えて、雇用(労働)契約書や雇用(労働)通知書の形式を見直すとともに、雇用の際の説明にも充分に留意する必要があります。