役立ちNEWS解説 2008年7月18日 

 改正最低賃金法が施行されました


平成20年7月1日、改正最低賃金法が施行され、最低賃金の決定基準や罰金の上限額、派遣労働者への適用関係などについて大きな改正が行われました。


罰則の強化

最低賃金には、「地域別最低賃金」と「産業別賃金」とがあり、これらのうち高い金額が適応されることになっているのはご存じの通りと思います。

さて、今回の改正により、「地域別最低賃金」において定める最低賃金額以上の賃金を支払わない使用者に対する罰金額の上限が2万円であったものが、50万円に改められることとなりました。
一方、「産業別最低賃」については、その不払について最低賃金法の罰則は適用されないこととなりますが、これについては賃金の全額払違反(労働基準法第24条違反)となることから、これに係る罰則(罰金額の上限30万円)が適用されることになります。

また、「周知義務(※)」(地域別最低賃金及び船員に適用される最低賃金に係るものに限る)等の違反についてもその罰金額の上限が30万円に改められることとなります。
※使用者は、最低賃金の概要を、常時作業場の見易い場所に掲示するなどの方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければなりません。

最低賃金の減額の特例の新設

従前は、所定の対象者に対して、労働基準監督署に最低賃金の適用除外の許可を受けた場合、最低賃金の適用除外を行うことができました。つまり、改正前の最低賃金法では、都道府県労働局長から最低賃金適用除外許可を受けた労働者には、最低賃金の効力についての規定は適用しないこととされていたのです。

しかしながら、最低賃金のセーフティネットとしての機能を強化する観点から、最低賃金の適用対象をなるべく広範囲なものとすることが望ましく、これまでも支払賃金の下限額については、適用除外許可の条件としてきましたが、法律上適用除外とするよりも最低賃金を適用した方が労働者保護に資することから、今般、適用除外規定を廃止し、減額特例規定を設けたものです。

これまで適用除外の対象者となっていた以下のような労働者については、使用者が都道府県労働局長の「減額特例」許可を受けた時は、労働能力その他の事情を考慮して減額した額により最低賃金の効力についての規定を適用することになりました。
◆対象労働者

  • ①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • ②試の使用期間中の者
  • ③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受ける者のうち省令で定める者
  • ④軽易な業務に従事する者
  • ⑤断続的労働に従事する者

◆最低賃金の適用除外に関する経過措置
なお、要注意なのは、施行日(平成20年7月1日)時点において既に適用除外の許可を受けている労働者について、使用者は平成20年7月1日から平成21年6月30日までの間に新たに減額特例の許可を受ける必要があることです。そして、この手続きを行わないで、最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者には、罰則が適用されることとなりました!今まで、最適賃金の適用除外の許可を受けている従業員がおられる場合は、なるべく早く減額特例の許可申請を行ってください


派遣労働者に適用する最低賃金

派遣労働者については、派遣先の事業場に適用されている地域別(産業別)最低賃金が適用されることになりました、派遣元事業主様は、派遣先事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。

 

最低賃金額の表示が時間額のみに変更

現行の法律では、最低賃金は、時間額、日額、週額又は月額で定めることとされていますが、この表示単位が、時間額のみとなりました。 最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間、労働日に対応する賃金に限られます。具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。特に間違えやすいのですが。Dに示す精皆勤手当です。割増賃金の算定の基礎にはいれるのですが、最低賃金を計算する上では、これを含めないで基準に達しているかを判定しますから、ご注意ください。

  • ①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • ②1ヶ月を超える期間ごとに支払われている賃金(賞与など)
  • ③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • ④所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • ⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • ⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当


昨年、地域別最低賃金は、ほとんどの都道府県で大幅な上昇となりました。最近のニュースを見ていると、連合などからは最低賃金の引き上げの要求が、今年の秋の最低賃金の改正に注目したいところです。

最低賃金法に関するパンフレットはこちらでどうぞ。