役立ちNEWS解説 2008年11月13日 

 派遣法改正案、閣議決定!


11月4日、「労働者派遣法の改正案」の国会提 出について、閣議決定がなされました。 今臨時国会で成立が目指しています。改正点は、主として以下のような点です。成立はまだですが、今から内容を把握しておきましょう。
施行については、2段階で行われ、(1)〜(3)が平成22年4月1日、(4)〜(10)が平成21年10月1日とされています。結局、最も話題に上っていた日雇い派遣の禁止については、平成22年4月施行となるようです。

労働者派遣法の主な改正案

  • (1)日雇い派遣の原則禁止
  • (2)グループ企業内派遣の8割規制
  • (3)離職者の労働者の派遣の禁止
  • (4)登録型派遣労働者の常用化を努力義務化
  • (5)期間の定めのない派遣労働者に対するインセンティブの創設
  • (6)派遣料金に占めるマージンの割合などの情報公開の義務化
  • (7)派遣労働者に対する待遇の改善の努力義務化
  • (8)雇用時及び紹介予定派遣における派遣契約締結時における将来の労働条件等の明示の義務化
  • (9)派遣先に対する労働契約申込みの勧告制度創設
  • (10)法違反に対する是正措置の強化
  • (11)処分逃れを防止するため欠格事由を整備

(1)日雇い派遣の原則禁止

日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣=日雇い派遣は、原則禁止されることとなります。ただし、一定の業務(日雇派遣が常態であり、かつ、労働者保護に問題のない業務等=政令で限定列挙されるとのこと)については、日雇い派遣の禁止は適用されません。また、現在の日雇派遣労働者等の雇用の安定を図るため、公共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずることとなります。

(2)グループ企業内派遣の8割規制

グループ企業(親会社及び連結子会社)内の派遣会社が一の事業年度中に当該グループ企業に派遣する人員(定年退職者を除く)の割合を8割以下にしなければならなくなります。8割を超えている場合には、指導、指示、許可の取消し等の各措置を順次行われます。


(3)離職者の労働者の派遣の禁止

離職した労働者(定年退職者を除く)を、元の企業に派遣することについて、離職の後1年間は禁止されます。

(4)登録型派遣労働者の常用雇用化の努力義務化

『派遣元事業主』に対して、登録型派遣労働者(=仕事があるときのみ派遣元との雇用契約が成立して派遣先に派遣される)については、本人の希望に応じ、以下のいずれかの常用雇用への転換推進措置を講ずることが、”努力義務”となりました。

  • 期間の定めのない派遣労働者又は通常の労働者として雇用
  • 紹介予定派遣の対象とすることを通じて、派遣先での直接雇用を推進
  • 期間の定めのない労働者への転換推進のための教育訓練等の措置を講ずる

(5)期間の定めのない派遣労働者に対するインセンティブの創設

(4)に加えて、期間を定めない派遣労働者としての雇用を派遣元に促進するインセンティブとして、従来禁止されていた事項が解禁になります。

  • 期間の定めのない派遣労働者への、労働契約申込義務の適用対象から除外(派遣期間の定めのない26業務に限る)
  • 期間の定めのない派遣労働者については、事前面接等が可能に。

(6)派遣料金中のマージンの割合、教育訓練などに関する情報公開の義務化

派遣元事業主に対しては、派遣労働者の数、派遣先の数、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン)、教育訓練に関する事項等を、情報公開することが義務化されます。

(7)派遣労働者に対する待遇の改善の努力義務化

派遣労働者の賃金については派遣労働者の従事する業務と同種の業務に係る一般の賃金水準その他の事情を考慮しつつ、その職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等を勘案し、決定することが努力義務化されます。

(8)雇用時及び紹介予定派遣における派遣契約締結時における将来の労働条件等の明示の義務化

派遣元事業主に対して、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、雇用した場合における賃金の額の見込みなど待遇に関する事項の説明することが義務化されます。 また、紹介予定派遣における労働者派遣契約の締結の際、職業紹介後に労働者が従事する業務の内容、労働条件など紹介予定派遣に関する事項を明示することが義務化されます。

(9)派遣先に対する労働契約申込みの勧告制度創設

従来、適用除外業務への派遣、無許可・無届け事業所からの派遣、期間制限違反、いわゆる偽装請負などがあっても、行政(労働局)からは、これらの違反に対する是正を受けても、派遣労働者との労働契約に関する指導(つまり直接雇用するように促すことなど)を受けることは無かったのですが、今回の法改正では、一定要件で”勧告”がなされることとなりました。

上記のように派遣先に一定の責任があり、派遣労働者が希望する場合には、派遣先に対し、行政(労働局)が、「労働契約を申込むこと」及び「賃金その他の労働条件を低下させることのないよう措置をとること」を勧告できることとなりました。ただし、派遣受入れ期間が過ぎる場合に規定されている”雇用申込み義務”と同様に、勧告される内容は、「労働契約を申し込む」ことであって、「直接雇用すること」ではないので、この点は誤解しないようにしなければなりません。

(10)法違反に対する是正措置の強化

派遣先の法違反に対しては、従来は、再三の指導又は助言をまず行うこと(=指導・助言前置主義)とされていましたが、より強い行政措置(勧告)の発動が行われることとなりました。

(11)欠格事由の整備

以下の欠格事由の場合は、労働者派遣事業が許可されなくなりました。

  • ①許可を取り消された法人等の役員であった者で、取消しの日から5年を経過しないもの
  • ②許可取消し等の手続きが開始された後に事業の廃止の届出をした者で、届出の日から5年を経過しないもの等


なお、厚生労働省発行の派遣法改正の内容をまとめた改正要綱は、こちら(PDF)。 ただし、いくつかにまとめてあるのですが、橘の個人的感想としては、分類がわかりにくような気がします。