役立ちNEWS解説 2008年12月9日 

 平成21年5月、裁判員制度が開始されます!


裁判員制度とは?

平成20年11月28日に、裁判員候補者に『裁判員候補者名簿への記載のお知らせ』の郵送がはじまったことから、さかんに報道がなされましたが、平成21年5月21日より、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」という法律に基づいて、『裁判員制度』が開始されます。

『裁判員制度』とは、国民の中から抽選で選ばれた裁判員が刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。日本で採用される裁判員制度は、裁判員と裁判官が一緒に、”事実認定”と”量刑決定”を行ないますが、”法律評価”だけは、裁判官が単独で行う制度となっています。従って、裁判員は、有罪か無罪かを決定するだけでなく、有罪の場合には、たとえば「懲役○年」という量刑まで決めることになります。

なお、この裁判員制度が適用されるのは、殺人や強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死、現住建造物等放火、身代金目的誘拐などの「一定の重大な犯罪」です。


どのような人が裁判員になるのか?

裁判員になるための要件は、日本国民で、年齢満20歳以上の者です。ただし、禁固以上の前科がある人、国会議員や司法関係者(裁判官、検察官、弁護士)、裁判所の職員、あるいは事件関係者などは、裁判員に選ばれません。

裁判員の選び方は、まず、選挙権のある人の中から、翌年の裁判員候補者となる人を毎年抽選で選び、裁判所ごとに裁判員候補者名簿が作られます。裁判員候補者名簿に記載されたことは本人に通知され、この段階で、法律上裁判員になれない人や、客観的な辞退事由があって辞退を希望している人などは除外されます。

次に、事件ごとに、裁判員候補者名簿の中から、更に抽選でその事件の裁判員候補者が選ばれます。選ばれた候補者には、約6週間前に呼出状が送られますが、この段階でも、辞退事由の有無や辞退希望の理由によっては、辞退が認められます。その後、検察官や弁護人の意見を取り入れたうえで、最終的に、事件ごとに6人の裁判員が決定されます。国民が裁判員になる可能性は、3500人〜5000人に1人程度だと試算されているそうですが、大阪などは、200人に1人とも言われています。


仕事が忙しい場合には、裁判員を拒否できるのか?

裁判員制度は、広く国民に参加してもらうことを予定している制度なので、原則として辞退することはできません。しかし、70歳以上の方や、重い病気を患っているような場合、同居の親族の介護などが必要な場合、裁判所が遠方で通うことが困難である場合、妊娠中または出産直後の場合、あるいは学生・生徒などは、辞退することができる場合があります。

では、毎日の仕事に追われ自分で予定調整が難しい経営者やサラリーマンなどが「仕事が忙しい」といった理由で裁判員を辞退できるのでしょうか。法律では、「とても重要な仕事があり、あなた自身が処理しなければ、著しい損害が生じると裁判所が認めた」場合にのみ、辞退が認められることになっています。辞退申込みが認められる人か以下のような方とのことです。

  • ①株主総会時の会社社長
  • ②収穫ピーク時の農業・漁業関係者
  • ③仕事のほとんどを担当している会社社長

しかし、これは非常に厳しい要件ですから、一般論としていえば、「仕事が忙しい」というだけでは辞退はできないと考えたほうがいいでしょう。


従業員が裁判員に選ばれた場合、会社はどのように対応する?

実際に従業員が裁判員に選ばれた場合には、それに必要な休みを取得することは「公民権の行使」として労働基準法第7条に準じて保障されているとされます。また「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」第71条も、労働者が裁判員として休暇を取得した場合でも、解雇や不利益な取り扱いをしてはならないと定めています。

(関連法規)

労働基準法 第7条(公民権行使の保障)


使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第71条(不利益取扱いの禁止)


労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


実際には、従業員が裁判員としての活動を行うため必要な休みを取得した日の給与の取り扱いについては規定がないことから、来春に向け、労使でこの問題について議論し、自社の従業員が裁判員に選任された際の取扱いを規定化しておく必要があります。従業員の「裁判員裁判」の参加等の「休暇」の有給・無給の取扱いについては、法律上の「不利益取扱いの禁止」の趣旨にかんがみて、「有給休暇」として扱うのを相当だとはされていますが、それは義務ではありません。


中小企業の対応の実情は?

東京商工会議所が中小企業経営者(従業員300人未満)らにアンケートした結果、11月21日時点で、「特に何もしていない」との回答が60.8%で、昨年度の調査より11.9ポイント減ったことが、分かったそうです。従業員を参加させるための休暇制度を「検討中か導入済み」は、ほぼ4社に1社の24.6%で、昨年度比16.1ポイント増だとか。

いずれも裁判員制度への協力態勢が進んだことを示すものの、大企業の63%が休暇制度導入を決めたとする日本経団連のアンケート結果と比べ、取り組みの遅れが浮き彫りになりました。

さて、裁判員になった場合の休暇の取り扱いについて、労務行政研究所より「裁判員制度実施に向けた企業の対応調査」という資料が公表されました。これは同法人の「労政時報」の購読企業を対象に実施された調査ですが、これによれば裁判員の選任手続きや実際に裁判に参加するために社員が休務する場合に備えて、休務時の休暇付与や賃金の取り扱い等のルールについて、「すでに決定している」(「ほぼ決定している」場合を含む)が46.5%にも上ることが明らかになりました。また「今後検討する」は30.5%、「現在検討している」は21.8%となっています。

さらに、休暇を付与した当日の賃金の取り扱いについては、「通常勤務時とまったく同じ(有給)扱いとする」が89.2%と大多数を占め、「休務した分は無給とする」企業は8.4%という結果がでております。しかし、企業規模によって異なる傾向がみられ,300人未満規模では13.6%が無給扱いと回答しています。

しかしながら、これは「労政時報」の購読者である、比較的大企業で人事労務管理に積極的な企業のデータですので、一般的な企業の平均像ではないかもしれません。しかし、こうした先進的な企業の大多数が、裁判員休暇について有給取り扱いをしているという事実は、今後の制度設計にも多少なりとも影響を与えることになるかもしれません。

その他、大阪信用金庫の中小企業を対象とした独自調査(H20.6)によれば、 中小企業においては、裁判員になった場合の取り扱いは、以下のようになっているそうです。

  • ◆特別休暇扱い・・・22.6%
  • ◆有給休暇扱い・・・17.1%
  • ◆出勤扱い・・・9.8%
  • ◆欠勤扱い・・・3.0%
  • ◆分からない・・・47.5%

業種によっても異なるようですし、その他の意識調査の結果も公開されていますので、詳しい内容は、中小企業の裁判員制度に対する意識調査(大阪信用金庫:PDF)を是非ご覧下さい。

さて、大事なことは、企業の具体的対応として、新たに、「裁判員休暇制度」を新設する、または、選挙権その他の公民権行使の場合に準じて就業規則の該当項目の修正をする、などの対策が必要となってくるということです。従業員が裁判員に選ばれ休むことになってからあわててどのように対応するかを考えるより、今から準備しておかなければなりません。


裁判員になった場合の報酬の取り扱いは?

裁判員候補者や裁判員等になって裁判所に出向いた場合には、”交通費”と”日当”が支払われることになっています。また、自宅から裁判所が遠いなどの理由で宿泊せざるを得ない場合には、”宿泊料”も支払われることになっています。この計算方法は、最高裁判所規則で定められた方法で計算されることになっているとのことで、実際にかかった交通費、宿泊費と一致しないこともあるとされています。

税理士の先生に伺ったところ、この日当等の所得税法上の取扱いについて以下の通りに考えて差しつかえないことになったそうです。

  • ●裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する。
  • ●実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する。

裁判員候補者や裁判員等になったことで出頭したり、裁判員として職務に従事した場合に、本人からの申出により証明書が発行されることになっていますが、税務上の証明がどうなるかはまだ明確になっていないのだそうです。もし従業員から、この旅費や日当の取扱いについて質問があったときには『雑所得』になる旨を伝える必要があるでしょう。