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労働者派遣について その1〜派遣法全般について〜(2/4) |
4.派遣期間について
(1)派遣期間のルール
派遣受入期間の制限
派遣法では、派遣期間があまり長期になることは好ましくないとしています。
派遣期間を無制限にすれば、短期契約を繰り返す人材派遣の方が、正社員を雇うより企業にとっては雇用調整が容易なため、人材派遣より安定的な雇用形態である正社員の業務がどんどん派遣に置き換えられてしまう可能性があるからです。
このため、派遣先は、一般労働者の業務に置き換えられる可能性の少ないとされる図図表の@からDの業務を除き(つまりEの自由化業務について)、派遣先の「事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務」について、派遣元から「派遣可能期間」を超えて継続して人材派遣の提供を受けてはならないことになっています(派遣法第40条の2)。このような「派遣受入期間の制限」が大原則となっているのです。
この制限は、基本的に派遣先に課されたものです。つまり、派遣受入期間の制限は、派遣スタッフを入れ替えたり、派遣元を換えたとしても継続していると判断されるため、初めて派遣する派遣元には、この制限に抵触するかどうかを派遣先に確認しなければ分からないからです。
派遣期間とクーリング期間
人材派遣を受けていると判断される期間は、派遣の開始日から最終日までです(派遣先指針第2の14)。
派遣期間の制限に反しないよう、1度限度いっぱい派遣を受けた派遣先が、新たな人材派遣を受ける場合には、しばらく派遣を受けない期間を設けなければなりません。
これを「クーリング期間」といって、直前の人材派遣と次の派遣までの間が3ヵ月を超えていれば、継続しているとみなされません(業務取扱要領)。
業務別派遣受入期間の限度 |
業務の区分 |
受入期間の限度 |
① 専門的26業務 |
制限なし |
② プロジェクト業務 |
制限なし(行政解釈で3年) |
③ 就業日数が少ない業務 |
制限なし |
④ 育児の代替業務 |
育児休業者の復職まで |
⑤ 介護の代替業務 |
介護休業者の復職まで |
⑥自由化業務 |
派遣可能期間(原則1年。1年を超え3年以内で定めたときはその期間)
※特定製造業務については1年限度(経過措置) |
(2)派遣期間の取扱い
「就業の場所ごとの同一の業務」とは
上記⑥の自由化業務について、制限の対象となる派遣期間とは、「事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務」についてです。
「事業所その他派遣就業の場所」とは、課、部などの組織で考える方が分かりやすいのですが、社内の組織の名称は会社で自由に決められるため、他の部署からの独立性、人事の取扱い、指導監督のあり方、労働の態様などから、実態に即して総合的に判断するものとされています。また、「同一の業務」とは、派遣契約を更新して引き続き業務を行う場合のほか、派遣先における班、グループなどの組織の最小単位において行われる業務も同一の業務であるとみなされます。
派遣可能期間
「自由化業務」では、就業の場所ごとの同一の業務についての派遣可能期間は、原則として1年となっています。ただし、派遣先が、1年を超え3年以内の期間として派遣期間を定めた場合はその期間となります(派遣法第40条の2第2項)。
派遣先が派遣期間を定める(または変更する)場合、あらかじめ派遣先の事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)に対し、① 派遣を受ける業務と② 派遣期間を書面により通知し、その意見を聴く手続きが必要です(派遣法第40条の2第3項、4項)。
この意見聴取について、過半数労働組合がなく労働者の過半数を代表する者を選出して行う場合は、その選出は、管理監督の地位にある者でないこと、そして投票や挙手などによることが多いです。
なお、この意見聴取については、3年間保存することが義務付けられています。
派遣先事業所における派遣期間の通知書と、労働者からの意見書について、様式は定まっていませんが、サンプルとしては以下のようになります。
(3)派遣先から派遣元へ通知すべき事項
派遣受入期間の制限の通知
派遣法では、派遣先が「自由化業務」について新たな人材派遣を受けようとするときは、派遣契約を締結するに当たり、この業務について「派遣受入期間の制限の規定に抵触することとなる最初の日」をあらかじめ派遣元に通知しなければなりません(派遣法第26条5項)。
例えば、1月1日から12月31日の派遣期間とすると、翌1月1日が抵触日となります。
なお、人材派遣の開始後に、派遣先が派遣可能期間を1年を超え3年以内の期間として定めたときや変更したときは、同様に派遣先へ通知しなければなりません(派遣法第40条の2第5項)。
この通知は、通知すべき事項を記載した書面(または電子メール、ファクシミリ)により行わなければなりません(派遣則第24条の)。
通知がなければ派遣禁止
なお、派遣元では、この規定による通知がないときは、通知をしない派遣先との間で、派遣契約を締結してはならないこととされています(派遣法第26条6項)。
5.派遣契約書・就業条件通知書、派遣先・元管理台帳の記載事項の比較
それぞれ派遣法で記載すべき事項が規定されている書類について、何が記載されていないといけないか、比較表にまとめました。
派遣契約書、就業条件通知書、派遣先・元管理台帳の記載事項一覧 |
項目 |
人材派遣
個人契約書 |
就業条件通知書 |
派遣元管理台帳 |
派遣先管理台帳 |
スタッフの氏名 |
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○ |
○ |
業務の内容 |
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○ |
○ |
※ |
派遣先(派遣元)事業主の名称 |
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○ |
○ |
派遣先(派遣元)事業所の名称・所在地 |
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○ |
○ |
○ |
指揮命令者 |
○ |
○ |
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派遣期間 |
○ |
○ |
○ |
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就業日 |
○ |
○ |
○※ |
※ |
始業終業時刻・休憩時間 |
○ |
○ |
○※ |
※ |
安全衛生 |
○ |
○ |
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苦情の処理 |
○ |
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※ |
※ |
解除に当たって講ずる措置 |
○ |
○ |
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紹介予定派遣の場合のその事項 |
○ |
○ |
○ |
○ |
派遣元・派遣先責任者 |
○ |
○ |
○ |
○ |
時間外・休日労働 |
○ |
○ |
○※ |
※ |
福祉の便宜の供与 |
○ |
○ |
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社会保険などの適用 |
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○ |
○ |
派遣期間の制限除外業務の場合の表示 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○・・・記載が必要な事項、※・・・結果について記載が必要な事項
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