労務管理勉強室 2009年9月19日   ◆この記事は2ページあります

 未払賃金立替払制度(2/2)


◆立替払を受ける場合の手続は

立替払の請求の手続については、倒産事由が法律上の倒産の場合と事実上の倒産の場合とでは異なります。

(1) 法律上の倒産の場合の手続

①立替払請求人は、未払賃金総額等必要事項についての証明を管財人等に申請します。

破産等の区分 証明者
破産・会社更生 管財人
特別清算 清算人
民事再生 再生債務者等

②管財人等から未払賃金の額等について証明書が交付されたら、立替払請求書及び退職所得の受給に関する申告書に必要事項を記入して機構に送付します。
なお、管財人等から未払賃金総額等の事項の全部又は一部について証明を受けられなかった場合は、その証明を受けられなかった事項について、所轄労働基準監督署長に確認申請をします。
以降の手続については2.事実上の倒産の場合の手続と同じです。

③機構は、立替払の決定を行い、立替払請求人に対して立替払決定通知書を送付するとともに、指定された金融機関(ただし、漁業協同組合は利用できません)に振り込みます。


(2) 事実上の倒産の場合の手続

立替払請求人は、所轄労働基準監督署長に、当該事業場が事業活動を停止し、再開の見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態にあることの認定の申請を行います。
認定申請書には、事業主の事業活動の状況等に関する事項を明らかにする資料を添付することとされています。
認定申請は、当該事業場を退職した立替払請求人が2人以上いる場合は、そのうちの1人が行えば足り、その効果はすべての退職労働者に及びます。また、認定申請は、当該事業場を退職した日の翌日から起算して6か月以内に行わなければなりません。

所轄労働基準監督署長から認定通知書が交付されたら、立替払請求人は、未払賃金総額等必要事項について、所轄労働基準監督署長に確認申請を行います。
確認申請書には、労働契約書、賃金台帳の写し、出勤簿の写し等未払賃金額等を証明する資料があれば添付することとされています。

所轄労働基準監督署長から確認通知書が交付されたら、立替払請求書及び退職所得の受給に関する申告書に必要事項を記入して機構に送付します。

機構は、立替払の決定を行い、立替払請求人に対して立替払決定通知書を送付するとともに、指定された金融機関(ただし、漁業協同組合は利用できません)に振り込みます。

※未払賃金の立替払請求書・証明書、認定申請書、確認申請書は労働基準監督署にあります。 また、未払賃金の立替払請求書・証明書は機構のサイトからダウンロードすることもできます。


◆立替払金に対する課税

 立替払により弁済された賃金(退職金を含む)については、租税特別措置法により、原則として退職所得とされ課税されます。
ただし、退職所得については、次表のとおり、退職所得控除が認められています。

勤続年数 退職所得控除
20年以下の場合 40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年を超える場合 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

※未払賃金の立替払を受ける方は、「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」を支払者である機構に提出することにより控除が受けられます。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」の提出がない場合には支払金額の20%相当額が源泉徴収されます。


◆立替払後の処理(求償)

 立替払をしたときは、機構は立替払金に相当する金額について立替払を受けた労働者の賃金債権を代位取得します。
代位取得した賃金債権については、国の債権管理等に関する法律に準じ、次のとおり管理し、必要に応じ差押、仮差押、抵当権の設定又は民事訴訟の提起等を行い回収を図ります。
機構から立替払があったからといって、事業主は賃金支払義務を免れるものではありません。

  • 1.法律上の倒産事案の場合
  • (1)裁判所に対して
  • 債権の届出又は債権者名義変更の届出
  • (2)管財人、管理人又は清算人に対して
  • 賃金債権の代位取得通知又は賃金債権の代位取得通知及び弁済請求
  • (3)再生債務者に対して
  • 未払賃金立替払の通知及び賃金債務の弁済請求

  • 2.事実上の倒産の場合
  • 事業主に対して、未払賃金立替払の通知及び賃金債務の弁済請求

 上記手続は書面により、原則として立替払実施月の翌月に行います。
なお、当機構が代位取得した賃金請求権と労働者の賃金請求権は、その性質において同一ですので、弁済の際、弁済額が債権額に満たない場合は、それぞれの債権額に応じ按分による弁済となります。