労務管理勉強室 2008年9月8日 ◆この記事は2ページあります 〔←前のページへ〕
◆業務上のマイカー使用時の事故次は、マイカーを仕事で使用した場合の事故について具体的に考えます。 「従業員がマイカーで取引先に行く途中、事故を起こしました。被害者は後遺症を訴えています。また、車の任意保険も切れており、本人では負担できない額です。そして、会社に請求すると言ってきました。この場合、会社と従業員の責任はどうなるのですか。」 これについては、マイカー通勤の場合と同じように、会社の業務上でのマイカー使用に対する対応で大きく変わります。
などを会社、従業員のどちらが負担しているかということです。按分して会社が負担する場合も会社に責任が発生します。これらを会社が負担していたら、会社に責任があることになるのです。 以上のように、業務においてマイカーを使用させていた場合には、会社が責任を問われる可能性が非常に大きいので、
は、一旦、賠償金を支払うことが多いのです。
上の事例も同様です。 加えて申し上げると、この事例の大きなポイントは「保険の期限切れ」です。もし、任意保険が有効なら、会社も、従業員も負担額を押さえられたのです。業務にも使わせているマイカーの保険の確認をしていなかった点は、会社にとって大きな落ち度となった訳です。 ◆会社の対応策は?以上ご説明したように、マイカーの社用使用に関し裁判所は会社側に厳しい責任を負わせるという傾向があり、便利さゆえに従業員のマイカーを寸借していたようなことがありますと、死亡事故の損害賠償額も、事案にもよりますが、一般的には高額化の一途を辿っていますので、たまたま従業員の私用中の事故であっても多額の損害賠償責任を負わされることにもなりかねません。さらに、そのマイカーに任意保険が掛けられている保証もありませんし、そうなるとさらに会社負担額は大きくなります。 従って、もし、従業員がマイカー通勤をすることを認めている(黙認している)、又は、仕事にマイカーを使用することを認めている(黙認している)ならば、会社としては、以下のようなことを実施することが大切です!
これらを行えば、会社は相当の責任を果たしていることになります。事故防止にも積極的に関与したことになります。結果、会社の負担割合が減る可能性もあるのです。
◆マイカー使用時の事故に関する参考判例判例1.社有車を従業員が私用のために使用していて会社の責任を認めた例 従業員が事務所内の机の引出しの中に保管してあったキーを無断で持ち出し、営業のために従業員に使用させていた車両を私用運転中に起こした事故について、その運行は企業の支配下にあったものとして企業に運行供用者責任を認めた。(名古屋地裁 昭和56年7月10日判決) 判例2.社有車による泥棒運転中の事故について会社の責任を認めた例 従業員がドアをロックせずキーをつけたまま車を放置しておいたところ、通りがかりの者が運転して事故を起こした場合について、従業員の放置行為と事故との間に因果関係があり、かつ、保管上の過失があるとして、使用者責任を認めた。(京都地裁 昭和56年9月7日判決) 判例3.マイカーを業務に使用していて会社の責任を認めた例 自動車販売会社のセールスマンが、会社に申告した以外のマイカーをセールス用にも使用していた場合、非申告車であってもほぼ毎日セールス用に使用していたことから、会社はその運行により利益を得、当車両に対し十分な管理・監督を及ぼしうる地位にあったとして、会社に運行供用者責任を認めた。 (名古屋地裁 昭和48年7月9日判決) 判例4.マイカー通勤途上の事故で会社の責任を認めた例 従業員がマイカー通勤途上で起こした事故について、通勤は原則として業務の一部を構成するものとして業務執行性を認め、さらに通勤手当を支給していたことから会社のマイカー通勤への容認と評価し、会社に使用者責任を認めた。 (福岡地裁 平成10年8月5日判決) 判例5.マイカー通勤途上の事故で会社の責任を認めなかった例社員のマイカーによる通勤途上の事故につき、会社は駐車場を第三者から借りて使用させていたが、駐車料金は利用者に分担して負担させており、日頃、そのマイカーを社用に利用したこともなく、燃料費や維持費を支給したこともないことから、そのマイカーに対して運行支配や運行利益があったとはいえないとして、会社に運行供用者責任を認めなかった。 (鹿児島地裁 昭和53年10月26日判決) 判例6.私用中の事故だが社員自家用車制度のマイカーのため会社の責任を認めた例従業員の夏季休業中における事故であるが、
判例7.通勤車両に任意保険の加入を定めた社内規定を有効と認めた例 会社構内への通勤車両の乗り入れ、および駐車場利用の要件として、自動車保険(任意対人賠償保険)の加入を定めたマイカー通勤管理規定を有効と認めた。 (最高裁 昭和53年12月12日判決) |