労務管理勉強室 2008年5月15日 

 有期雇用と関連法規(1/2)


平成20年3月施行の「労働契約法」、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」4月施行改正パートタイム労働法など、有期雇用に関する雇用管理は、さらに厳格なものとなってまいりました。これらの新しい法規制と、その他の有期雇用に関連がある法規制についても今一度復習し、整理して覚え、間違った運用をしないようにしましょう。

【労働契約法】

労働契約法17条1項では、期間雇用の途中で解雇することはやむを得ない事由がある場合でなければできないとしています。 「やむを得ない事由」があることは使用者側が主張・立証責任を負います。
労働契約法17条2項は,雇用期間を必要以上に細切れにした労働契約を締結することを禁止する,という趣旨です。

【労働契約法】 第4章 期間の定めのある労働契約】
第17条
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


【有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準】

この告示は、有期労働契約の締結、更新および雇止めに際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにするため平成15年(施行は平成16年1月1日)に定められたものであり、有期労働契約を締結締結する場合には、契約の期間の満了後の更新の有無や判断基準を明示することなどが求められた内容になっています。なお、これは法律ではありません。遵守しなければ、行政指導を受ける可能性はあります(法違反ではありません)。

今回の改正では、雇止めの予告の対象の範囲について新しい基準が追加されました。これまでは以下の2つのケースについて契約の期間の満了する日の少なくとも30日前までに、その予告をしなければならないとされていましたが、これらのほかに「有期労働契約が3回以上更新された場合」が加わることになりました。よって、2〜3ヶ月の短期雇用を繰り返す方については、従来の1年超といった枠にとらわれず、対象となることになります。

  1. ① 1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、当該労働契約を締結した使用者との雇用関係が初回の契約締結時から継続して通算1年を超える場合

  2. ② 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

なお、もともとの「有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準」の内容は、以下の通りです。

1.契約締結時の明示事項等

(1)使用者は,有期契約労働者に対して,契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
(2)使用者が,有期労働契約を更新する場合があるとしたときは,労働者に対して,契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
(3)使用者は,有期労働契約の締結後に@又はAについて変更する場合には,労働者に対して,速やかにその内容を明示しなければなりません。

① 更新の有無の明示
明示すべき「更新の有無」の具体的な内容については,例えば下記の例を参考にしてください。

  • ・ 自動的に更新する
  • ・ 更新する場合があり得る
  • ・ 契約の更新はしない  等

② 判断の基準の明示
明示すべき「判断の基準」の具体的な内容については,例えば下記の例を参考にしてください。

  • ・ 契約期間満了時の業務量により判断する
  • ・ 労働者の勤務成績,態度により判断する
  • ・ 労働者の能力により判断する
  • ・ 会社の経営状況により判断する
  • ・ 従事している業務の進捗状況により判断する  等

③ その他留意すべき事項
これらの事項については,トラブルを未然に防止する観点から,使用者から労働者に対して書面により明示することが望ましいものです。

 

2.雇止めの予告

使用者は,契約締結時に,その契約を更新する旨明示していた有期労働契約(締結している労働者を1年を超えて継続して雇用している場合に限ります。)を更新しない場合には,少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに,その予告をしなければなりません。
【対象となる有期労働契約】
ここで対象となる有期労働契約は,
① 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され,最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
② 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

3.雇止めの理由の明示

使用者は,雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は,遅滞なくこれを交付しなければなりません。また,雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。
雇止めの理由の明示】
明示すべき「雇止めの理由」は,契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。 
例えば下記の例を参考にしてください。

  • ・ 前回の契約更新時に,本契約を更新しないことが合意されていたため
  • ・ 契約締結当初から,更新回数の上限を設けており,本契約は当該上限に係るものであるため
  • ・ 担当していた業務が終了・中止したため
  • ・ 事業縮小のため
  • ・ 業務を遂行する能力が十分でないと認められるため
  • ・ 職務命令に対する違反行為を行ったこと,無断欠勤をしたこと等勤務不良のため

4.契約期間についての配慮

使用者は,契約を1回以上更新し,1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は,契約の実態及びその労働者の希望に応じて,契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。
契約期間の上限は3年(一定の場合に上限は5年)です。


【改正パートタイム労働法】

改正パートタイム労働法については、こちらに別途まとめていますのでお読み下さい。