人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼振替休日と代休について

Q1: 休日出勤のかわりに別の日に休むことについて、当社ではもっぱら代休と呼んで同じ取り扱いをしていましたが、実は「振替休日」と「代休」というものがあり、これらは意味が違うと聞きました、振替休日と代休の違いとはなんですか?

Q2: 休日を振り替える場合に、翌週以降の日と振り替えてもいいのですか?

Q3: 当社では振替休日を利用した場合は、休日割増の概念がなくなるので、割増賃金を支払っておりませんでしたが、それでは違法だという社員がいます。本当でしょうか?

Q4: 別の週に与えた代休や振替休日の取得日については、働いていないのだから賃金をカットすることはできますか?

Q5: 週休2日制の場合に、『代休』ではなく、『休日振替』を行うメリットはあるのでしょうか?

Q6: 休日を、半日単位や時間単位で振り替えることはできますか?

Q7: 1ヵ月単位の変形労働時間制の場合に、振替休日を実施できるのでしょうか?

Q8: 1年単位の変形労働時間制の場合に振替休日は実施できるのでしょうか?

Q9: フレックスタイム制の場合、振替休日と代休に差があるのでしょうか?

Q10: 振替休日により、一旦振り替えた休日にどうしても出勤してもらわないわないといけない事情ができました。振り替えた休日を再度振り替えることができるのでしょうか?

Q11: 残業が1日の所定労働時間に達したら割増賃金を支払わず代休を1日付与することはできるか?

Q12: 未消化の代休ある退職予定者が、年次有給休暇の取得を申請してきました。この場合に、代休から消化するように命じることはできますか?

Q13: 労働基準法により、管理監督者には休日についての規定が除外されるはずです。したがって、管理職なら振替休日や代休を与える必要はないのでしょうか?

 

Q1: 休日出勤のかわりに別の日に休むことについて、当社ではもっぱら代休と呼んで同じ取り扱いをしていましたが、実は「振替休日」と「代休」というものがあり、これらは意味が違うと聞きました、振替休日と代休の違いとはなんですか?

A1: 多くの企業では、労働者を休日に出勤させる場合、振替休日あるいは代休を実施しています。
この2つは、似ているようですが、法的性質や実施要件などが異なりますので、注意が必要です。
両者の法的性質についてみると、振替休日は、労働契約上、休日を定められた日を労働日に、労働日と定められた日を休日に変更する制度とされています。一方、代休は、休日に労働した後にその代償として労働日の労働義務を免除するものとされています。(昭23・4・19 基収第1397号、昭63・3・14 基発第150号)。

振替休日は、労働契約を一時的に変更するものですから、これを実施するためには、

  1. ① 就業規則に振替休日を実施する根拠となる定めがある
  2. ② 振り替えるべき日を事前に特定する   

を満たす必要があります。(前掲行政解釈)

  1. ① については、就業規則に「業務の都合により休日を振り替えることがある」などと定めておくことが必要となります。また、規定には、「できる限り、休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましい」とされています(昭23・7・5 基発第968号、昭63・3・14 基発第150号)。

ただし、「条例に休日振替についての明文の規定がないけれども、少なくとも、個々の教職員の同意を得た場合においては、労基法35条2項の制限の範囲内で休日の振替を行うことができる」とした裁判例(鹿屋市教員事件 昭48・2・8鹿児島地判)もありますので、就業規則などに振替休日を行う旨の規定がない場合も、休日出勤を命ずる都度、事前に労働者から個別の合意を得た場合に限り、休日の振り替えが可能と考えられます。

  1. ② については、出勤させる休日の遅くとも前日までに、出勤させる休日の代わりにどの日を振替休日とするかをあらかじめ指定することが必要です。この指定する日は、「できる限り近接していることが望ましい」とされています(前掲行政解釈)。そのため、半年先や1年先の労働日とは振り替えられないといえましょう。

 
なお、事前に振り替え日を特定する限りにおいては、出勤する休日よりも前の日の労働日と振り替えることも可能です。
休日の振り替えによって、出勤日となった休日は、所定労働日となるわけですから、その日に休んだ場合は、ノーワーク・ノーペイの原則により、欠勤として賃金をカットすることもできます。
次に、代休は、単なる恩恵的な休暇ですから、振替休日のような実施要件ではなく、振替休日より手軽に行うことができるといえます。代休を与える日についても制約はないため、積み立て型の付与方式も可能です。

また、一般に代休は無給の休暇と解されますから、代休を取得した日については、賃金を支払う旨の特約がない限り、賃金を支給しないことになります。
振替休日と代休の違いについて、次の表にまとめました。

【振替休日と代休の相違点 】
  振替休日 代休
法的性格 【休日扱い】 労働契約を一時的に変更して、休日だった日を所定労働日に、所定労働日だった日を休日に変更する制度 【休暇扱い】 休日に出勤したことの代償として、所定労働日の労働義務を免除する制度。会社が年次有給休暇とは別に与える休暇(一般に無給の休暇)



就業規則の根拠規定 必要 (規定がない場合も労働者の個別の合意あれば実施可能) 不要 (命令権などの規定は備えておいた方がよい)
休日の事前の指定 必要 不要
実施できる範囲 ●法定休日に出勤させたい場合
  法定休日が確保できる範囲に限定
@変形休日制を採用していない場合
  →同一週内
A変形休日制を採用している場合
  →出勤する法定休日の属する4週の範囲内
※変形休日制を採用する場合は、就業規則に変形休日制に係る起算日定めることが要件となる
●法定外休日に出勤させた場合
  振り替えるべき日とできる限り近接 した日が望ましい
特に制限なし
代休を直近の日に取得させず、いったん積み立てておいて、時間的に余裕ができたときに取得させることも可能
ただし、一賃金締切期間を超えて代休を付与する場合は、休日の労働に対する割増賃金の支払いが必要。 (125%または135%)
時間外労働・休日労働の取り扱い ●法定休日を同一週内で振り替えた場合は、休日労働にならない
●変形休日制において、他の週の所定労働日と振り替えた場合は休日労働にならないが、当初の休日に出勤させたことにより週40時間を超えた時間は、時間外労働となる
●出勤させた休日が法定休日の場合は休日労働となる
●出勤させた休日が法定外休日の場合は週40時間を超えた時間が時間外労働となる
 

Q2: 休日を振り替える場合に、翌週以降の日と振り替えてもいいのですか?

A2: 労働基準法により、使用者には、① 週1回の休日(変形休日制を実施している場合は4週4日の休日。以下「法定休日」といいます)を与えること、② 法定休日に働かせた場合には、休日労働に対する割増賃金を支払うこと、 が義務づけられています。(同法第35条、第37条)。
では、法定外休日も出勤し、法定休日を同一週に振り替えることができず、まったく週1回の法定休日が確保できない形で、休日を振り替えられるでしょうか。

この点については、同法第35条に振替休日による例外規定がないことから、あくまで法定休日=週1回の休日を確保した上で、振替休日を実施しなければならないと考えられます。
つまり、変形休日制を採用していない会社の場合、週に1日も休日がなくなる形では、振替休日を実施することはできません。変形休日制を採用している場合は、特定の4週間に4日の休日が確保できない形で振替休日を実施することはできません。

このような場合には、代休で処理する方法が有効であると考えられます。なぜなら、代休を付与しても法定休日に勤務した事実は残るため、代休で処理する場合は、出勤した法定休日は、常に休日労働日として取り扱うからです。代休を付与した場合は、休日労働に対する割増賃金から、代休取得日の不就労時間単価を差し引くことができます。
なお、法定休日の出勤に対して、振替休日を実施できず、代休も付与しない場合は、原則どおり、休日労働として処理する(休日割増賃金を支払う)ことになります。

 

Q3: 当社では振替休日を利用した場合は、休日割増の概念がなくなるので、割増賃金を支払っておりませんでしたが、それでは違法だという社員がいます。本当でしょうか?

A3: この質問以降は、変形休日制を採用していない場合について解説します。
振替休日は、その方的性質から、実施要件が定められていますが、代休には、特に要件はありません。そのため、制約の多い振替休日であれば、割増賃金を支払う必要がないと誤解されるケースもあるようです。
確かに、法定休日に出勤させ、同一週内に休日を振り替えたなど法定休日を確保した上で振替休日を実施し、週の労働時間が40時間を超えない場合は、割増賃金は不要です。一方、同条件で代休を付与した場合は、割増賃金が必要となります。

 
(図1 クリックで拡大します)
(図2 クリックで拡大します)

例えば、7月20日の勤務に対して、図1では振替休日を、図2では代休を実施しています。図1では、振替休日の実施後も法定休日が確保されますので、休日労働の割増賃金は発生しません。一方、図2は、法定休日に労働した事実が消滅しないため、休日労働の割増賃金の支払いが必要になります。
しかし、会社の公休日など法定休日以外の所定休日(以下「法定外休日」といいます)に出勤させるケースでは振替休日と代休とで、割増賃金の支払い面での違いはありません。
なぜなら、同法第37条は、1日及び1週の法廷労働時間を超えて労働させた場合に時間外労働の割増賃金の支払いを義務づけ、法定休日に労働させた場合に休日労働の割増賃金の支払いを義務づけており、この規定は、振替休日を実施した場合も代休付与した場合と同様に適用されるからです。

したがって、別の週に振替休日を与えた場合は、振替休日であっても、時間外労働や休日労働に対する割増賃金を支払わなければならないのです。
図1と図2のケースでは、

  1. ① 6月8日の勤務に対しては、翌週の16日
  2. ② 7月6日の勤務に対しては同じ週の7日

に振替休日または代休を与えています。
① のケースでは、出勤した6月8日の属する週の労働時間が40時間を超えるため、振替休日の場合も代休の場合も時間外労働の割増賃金を支払うことが必要になります。
6月8日の代わりに休んだ16日については、代休の場合は時間単価×8時間を差し引くことができますが、振替休日の場合には、その会社の賃金制度により、取り扱いが異なることになります。(Q4参照)。
② のケースでは、振替休日を与えた場合は、割増賃金は不要です。

  一方、代休の場合は、6日の勤務は所定労働日の勤務ではなく、あくまで休日(法定外)の勤務ですから賃金の計算上は6日の勤務は法内残業として時間単価×8時間を支払い、代休を取得した8日は、時間単価×8時間を差し引くことになりますが、結果的には差し引きゼロになるため、振替休日と同じ効果があります。

なお、休日に出勤させて、次の賃金締切期間以降に代休や振替休日を与える場合には、同法第24条の「全額払いの原則」により、当該期間内における労働に対する賃金については、所定の賃金支払い日に、その全額を支払わなければなりません。
つまり、休日に行った労働に対する割増賃金部分だけでなく、時間単価部分を含めた賃金の支払いが必要になります。そして、賃金をカットするのであれば、代休や振替休日が実際に行われた賃金締切期間において、実施することになります。
例えば、月末締めの翌日10日払いの会社のケースで、今年の5月25日に休日出勤をさせ、6月6日に代休を与える場合は、5月分の賃金(6月10日に支払う賃金)には5月25日の労働に対する割増賃金(時間単価を含む全額)を加算して支払い、代休取得による賃金カットは、6月分の賃金(7月10日に支払う賃金)から6月6日の所定労働時間分の賃金(時間単価)をカットすることになります。

 

Q4: 別の週に与えた代休や振替休日の取得日については、働いていないのだから賃金をカットすることはできますか?

A4: 前述のとおり、代休取得は、ノーワーク・ノーペイの原則により、原則として無給ですから、代休取得日が同一週か翌週以降であるかに関係なく、代休取得日の属する賃金締切期間の賃金から、賃金カットすることになります。
ただし、欠勤した場合も賃金カットを行わない完全月給制の会社で代休取得日の賃金カットするのであれば、労働者に誤解を生じさせないよう就業規則などにその旨を定めておくとよいでしょう。
また、会社が代休命令権を有していない場合は、一方的に代休の取得を命じることはできませんから、労働者が代休の取得に同意しない場合には、割増賃金(時間単価分を含む全額)を支払って処理するしかありません。
円滑に代休を取得させるためには、① 代休を命じることがあること② 代休命令は正当な理由がなければ拒めないこと――を就業規則に定めておくとよいでしょう。

一方、別の週に休日を振り替える場合は、当初の休日に出勤させたことにより、その週の実労働時間が40時間を超えた場合は時間外労働となりますから、その超えた時間について割増賃金の支払が必要です。
このように、同じ賃金締切期間内で振替休日を実施した場合には、月の労働日数は変動しませんが、同一週内で振替休日を実施できなかったときは、月の労働日数が変わらないにもかかわらず、賃金制度によっては、当初の休日に働かせた時間について割増部分だけでなく時間単価分も支払わなければならないケースも考えられます。

例えば、所定労働日数が異なっても毎月の基本給は同じで、欠勤などについて賃金カット(所定労働日数をベースにカット額を算定)を行う月給制などの場合は、① 1日及び1週の所定労働時間の範囲ないとしなければならない② 一般に基本給などはその月の所定労働日及び所定労働時間を全部勤務すれば全額が支給されるため、法定労働時間の範囲内で設定された所定労働日及び所定労働時間の労働に対して支給されるものである―― ことから時間単価分の支払いも必要であると考えられるからです。

振替休日を実施する場合も振替休日により、週40時間を超えた場合は、その超えた時間を所定労働時間とみなすことはできません。
そして、元来その分の賃金(時間単価部分)は基本給などに含まれていないと考えられるため、その場には、時間単価も含め、別途支払う必要があると考えられます。
また、別の週に与えた振替休日は、労働義務の課されない休日とされますが、前述の月給制では、基本給などには休日に対する賃金は含まれていないと考えられるため賃金をカットできないといえます。
したがって、このような月給制については、特約がない限り、振替休日で休んだ日の賃金をカットすることはできないものと考えられます。

 

Q5: 週休2日制の場合に、『代休』ではなく、『休日振替』を行うメリットはあるのでしょうか?

A5: 前述のとおり、同一週内に休日を与える場合は振替休日が、異なる週に休日を与える場合は代休が、会社にとってメリットが高いといえます。これは週休2日制でも同様です。
振替休日のメリットは、割増賃金が発生しないことですが、そのメリットは同一週内で振り替える場合のみで、異なる週に休日(法定外休日に限られます)を振り替える場合は、割増賃金の支払いが必要になるかです。このため、異なる週に休日を付与するなら、代休にメリットがあります。振替休日と同様に割増賃金は発生しますが、事前特定の必要がないからです。
また、代休であれば、一定日数をスットクして年度末などにまとめて付与することもできます。ただし、賃金締切期間を超えて付与する場合は、賃金の清算が必要です。

 

Q6: 休日を、半日単位や時間単位で振り替えることはできますか?

A6: 休日出勤の場合は、臨時的に必要となった業務が終了するまで勤務させることが多いため、勤務時間が所定労働時間よりも短いケースもあります。そのため、半日単位や時間単位で休日を付与したい会社もあるようですが、勤務時間が短いことを理由に休日を半日単位や時間単位で振り替えられるわけではありません。

法定休日の与え方は、番方編成による交替制による場合などを除き、暦日とされています。したがって午前0時から午後12時までの24時間すべて労働から解放するものでなければ、その日は休日とはみなされません(昭23・4・5 基発題535号)。そのため、法定休日を振り替える場合には、常に暦日単位で振り替える必要があり、半日単位や時間単位で振り替えることは許されません。
また、法定外休日についても、「休日」である以上、暦日単位が原則と考えられます。したがって、振替休日については、半日単位や時間単位で実施することはできません。
一方、代休の場合は、会社が恩恵的に与える休暇ですから、暦日単位でも、半日単位でも、時間単位でも付与することが可能です。

ただし、短時間の休日出勤が常態化しており、休日に勤務した時間分を限度に所定労働日に遅れて出勤したり、あるいは早帰りを認める形で代休を時間単位で与える取り扱いが恒常化している場合は、実質的に始業・終業時刻を定めていないとみなされ、労基法に抵触する恐れがあります。
こうしたケースでは、短時間の代休を日々分割して付与するのではなく、1日分の所定労働時間に相当する代休を積み上げて暦日単位で付与することが望ましいといえましょう。ただし、この場合も割増賃金部分支払いは必要となります。

 

Q7: 1ヵ月単位の変形労働時間制の場合に、振替休日を実施できるのでしょうか?

A7: 1ヵ月単位の変形労働時間制(同法第32条の2)は、1ヵ月以内の変形時間を平均した週所定労働時間が40時間以内に収まる範囲で、特定の日や特定の週に法定労働時間を超える所定労働時間を設定することが認められる制度ですが、「変形期間を平均し40時間の範囲内であっても使用者が都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しない」とされています(昭63・1・1 基発第1号、平9・3・25 基発大195号、平11・3・31 基発第168号)。
しかし、同制度を運用しているからといって、休日の振り替えが全くできないわけではなく、通常の労働時間制度と同様に、

  1. ① 就業規則に振替休日を行うことがある旨を定めている
  2. ② 事前に振り替えるべき日を指定して実施する

の2条件を満たす場合は、実施が可能とされています。

ただし、判例では、1ヵ月単位の変形労働時間制において勤務日や勤務時間の変更を行うためには、就業規則に、労働者が予測可能な程度に具体性のある変更事由を定めた編変更条項が必要であり、それがない場合は、同法第32条の2違反として無効であると判断されています。(JR東日本 横浜土木技術センター)事件 平12・4・27 東京地判、岩手第一事件 平13・8・29 仙台高判)。
休日の振り替えも労働日の変更であるため、単に「業務上の必要がある場合は休日を振り替えることがある」という規定ではなく、どういう場合に行うかについて、労働者が予測可能な具体的な事由を就業規則に定めておくべきでしょう。
また、振り替えにより所定労働日に変更された必要は、あらかじめ8時間を超える所定労働時間が設定されていたわけではないため、8時間を超えて働いた場合は時間外労働としなければならないほか、振替休日を行った結果、週の労働時間が40時間を超えた場合は、超えた時間も時間外労働としなければなりません。

一方、代休は、休日に勤務させたことの代償として特定日の労働義務を免除する休暇であるため、労働日の変更といった問題は生じません。
ただし、代休を与えても休日に勤務させた事実は残るため、その日が法定休日であれば休日労働の割増賃金の支払いが必要となり、法定外休日の場合もその勤務により週の実労働時間が40時間を超える場合は超えた時間に対して時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。
なお、代休取得日は、原則として無給のため、同じ賃金締切期間内で代休を取得させた場合は割増部分のみを支払うことになります。

 

Q8: 1年単位の変形労働時間制の場合に振替休日は実施できるのでしょうか?

A8: 1年単位の変形労働時間制(同法第32条の4)は、1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内で、特定の週において40時間を超え、特定の日に8時間を超えて労働させることができる制度です。

行政解釈では、「使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することがないことを前提とした制度であるので、通常の業務の繁閑等を理由として休日振替が通常行われるような場合は、1年単位の変形労働時間制を採用できない」とされています。しかし、「労働日の特定時には予期しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられるが、そのような休日の振替までも認めない趣旨ではない」とされていますので、休日を振り替えることができないわけではありませんが、その実施には、一定要件を満たすことが求められます(平6・5・31 基発第330号、平9・3・28 基発第210号、平11・3・31 基発第168号)。

具体的には、振替休日を行う場合、次の① 〜③ の条件を満たす必要があります。

  1. ① 就業規則に振替休日を行う根拠規定があること
  2. ② 事前に振り替えるべき日を特定すること
  3. ③ 連続労働日数の制限の範囲内で振り替えること

 ③ の連続労働日数の制限とは、1年単位の変形労働時間制を適用する労働者を連続して働かせることのできる日数です。具体的には、(ア)特定期間じゃ週に1回の休日が確保できる範囲内(イ)特定期間以外は6日以内―― となります。(同法第3項、同法施行規則第12条の4第5項)。
ここでいう「特定期間」とは、同制度に関する労使協定で対象期間中の特に繁忙な期間として定めた期間をいい、対象期間が開始された後に特定期間を変更することはできません(平11・1・29 基発第45号)。

この制度は所定労働日を設定する段階だけでなく、実際の勤務段階においても適用されますから、振替休日を行う場合も、前記(ア)または(イ)を満たす範囲内で行わなければなりません。
なお、振替休日を実施し当初の休日に8時間を越えて労働させた場合は、当初の休日はあらかじめ労使協定で労働日として特定されていなかったため、振り替えた日に8時間を超える所定労働時間を設定していたとしても、8時間を超えた時間は時間外労働となります。
また、振替休日を行った結果、週の労働時間が40時間を超えてしまう場合は、その超えた時間が時間外労働になることにも注意が必要となります。

代休を付与する際の注意点については、Q7の1ヵ月単位の変形労働時間制の場合と同様ですが、代休の場合は、代休を付与することによって休日が労働日に変更されるわけではなく、休日労働を行った事実は残るため、連続労働日数の制限には抵触しません。

 

Q9: フレックスタイム制の場合、振替休日と代休に差があるのでしょうか?

A9: フレックスタイム制とは、清算期間と清算期間内の総労働時間を求めて、日々の労働時間の決定を労働者にゆだねる制度です(同法第32条の3)。
同制度の場合、就労を義務づけられる時間は、労使協定で定めた清算時間単位の総労働時間のみで、1日単位や週単位で就労を義務づけられる時間はありません。
そのため、時間外労働となる時間は、清算期間内の法定労働時間の総枠を超えた時間ですから、三六協定においても、「1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りる」とされています(昭63・1・1 基発第1号、平11・3・31 基発第161号)。

したがって、フレックスタイム制適用者を法定外休日に勤務させて、

  1. ① 振替休日を実施した場合
  2. ② 代休を付与した場合
  3. ③ @とAを両方とも実施しなかった場合

のいずれの場合についても、清算期間内の総実労働時間が清算期間の総枠の法定労働時間を超えなければ、時間外労働は発生しないことになります。
例えば、フレックスタイム制の適用者を法定外休日に出勤させるときに、

  1. ① 翌日に当該休日を振り替える
  2. ② 翌日に代休を付与する
  3. ③ 翌日は通常とおり出勤する

などの取り扱いを行う場合には、いずれの取り扱いを行っても、実労働時間が総枠の法定労働時間を超えない限り時間外労働はありません。

一方、フレックスタイム制であっても、法定休日に勤務させた場合には、直ちに休日労働となります。これはたとえ、清算期間が終了した時点で、その労働者の総実労働時間が総枠の法定労働時間に達していなかったとしても同様です。
フレックスタイム制の適用者を法定休日に勤務させた場合は、同一週内で振替休日を実施すれば、休日労働は発生しません。
一方、法定休日の労働に対し代休を与える場合には、法定休日に行った労働は、ずべて休日労働になるため、清算期間の総実労働時間に含めないよう注意が必要です。
法定休日の労働時間は総実労働時間には含めず、休日労働時間として別途把握しておくなどの取り扱いが必要です。

 

Q10: 振替休日により、一旦振り替えた休日にどうしても出勤してもらわないわないといけない事情ができました。振り替えた休日を再度振り替えることができるのでしょうか?

A10: 業務の都合により、休日を振り替えた日に出勤してもらわなければならないこともありましょう。こうした場合には、その振替休日が、法定休日の場合は休日労働の割増賃金支払い、法定外休日の場合は、その勤務によりその週の労働時間が40時間を超えれば、時間外労働の割増賃金を支払うことになります。

それでは、こうした場合、再度休日を振り替えられるのでしょうか。
一般的には、振り替えた休日を再度振り替えることがある旨の規定があることが実施の条件となると考えられますが、そのような規定があったとしても、再度の振り替えが度々行われるのであれば、労働者の生活設計を損なうことになるため、公序良俗違反や権利の濫用とされる可能性が高いと考えられます。
そのため、前述のような規定があり、労働者本人の同意を得ていたとしても、必要最小限で行うことが求められましょう。

 

Q11: 残業が1日の所定労働時間に達したら割増賃金を支払わず代休を1日付与することはできるか?

A11: 労働者に代休を与えること自体は、問題はありませんが、代休の取得を理由に残業時間をカットして、その時間分の割増賃金を支払わない取り扱いは問題となります。
代休取得日は、原則として無給とされるために、代休取得日の賃金(時価単価)を差し引くことは可能です。

しかし、同法第37条では、時間外労働を行わせた場合は割増賃金を支払うことを義務づけていますから、時間外労働を40時間行わせた場合は40時間の割増賃金を必ず支払わなくてはなりません。代休を与えても休日出勤や時間外労働を行った事実は残り、時間外労働の時間数を差し引くことや割増賃金の支払いを行わないことは許されず、例えば、所定労働時間が8時間の場合に8時間の時間外労働を1日の代休と取り替えることはできません。

したがって、

  1. ① すべての時間外労働に対して割増賃金(時間単価の125%)を支払う
  2. ② 別途、代休取得日の賃金(8時間の時間単価分)を差し引く

ことが必要となります。
しかし、この取り扱いは、 一賃金締切期間内に代休を付与した場合に限られ、一賃金締切期間を超えて代休を取得させた場合は、時間外労働を行わせた賃金締切期間に時間単価分を含めた125%の割増賃金を支払い、その後、代休を取得した賃金締切期間に時間単価分(100%)の賃金を差し引くことになります。

 

Q12: 未消化の代休ある退職予定者が、年次有給休暇の取得を申請してきました。この場合に、代休から消化するように命じることはできますか?

A12: 労働者が年次有給休暇の利用目的を会社に申し出る必要はなく、利用目的により会社が年次有給休暇の取得を取り消すこともできないため、退職予定者が、退職予定日まで年次有給休暇を消化する場合も、会社はその取得を拒否できません。

同法第39条第4項ただし書には、「労働者の請求した時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」として使用者の時季変更権を認めていますが、この「時季編変更権」が行使できるのはあくまでも「義業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
また、退職予定者が退職日まで年次有給休暇を取得する場合は、時季変更権を行使して年次有給休暇を与える他の日も存在しないことになります。さらに、代休の取得なら認めるということは、年次有給休暇を取得しても事業の正常な運営を妨げないわけですから、時季変更権を行使することはできません。

したがって、どちらにしても労働者の請求どおり、年次有給休暇を取得させなければなりません。そして未消化の代休については、取得できないなら、そもそも賃金の全額払い(第24条)に違反するのですから、賃金で支払うことになります。すなわち、代休を取得できない(させない)状態をそのまましておくと、その労働者の退職時にまとめて支払をする必要性がでてくるのです。労働者の健康面もあわせると代休の取得の推進を図る必要がありますね。

 

Q13: 労働基準法により、管理監督者には休日についての規定が除外されるはずです。したがって、管理職なら振替休日や代休を与える必要はないのでしょうか?

A13: 同法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用が除外される同法第41条第2項の「管理監督者」の範囲は、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制になじまないような立場にある者などに限定され、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などに留意し総合的に判断することとされています。(昭22・9・13基発第17号、昭63・3・14 基発第150号)。

したがって、企業内のいわゆる「管理職」が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するわけではなく、むしろ管理監督者に該当する管理職は一部に過ぎないといえます。(平20・4・1 基監発第0401001号)。
同法上の管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩及び休日の規定が適用除外となり、休日労働自体が発生しないため、振替休日や代休を付与する必要はないと考えられます。
しかし、管理監督者に該当しない管理職であれば、他の労働者と同様に振替休日や代休を与えるべきではないでしょうか。

ザ・スポーツコネクション事件(平12・8・7 東京地判)では、会社が、① 労働時間が管理されていない② 残業代を支払っていない③ 一定の役職手当を支払っている―― ことから、課長代理職の者を労働基準法上の管理監督者として、未取得の振替休日の取得を認めたと扱ったことなどについて争われました。
この判決では、「出退社時間はタイムレコーダーによって管理されていなかったこと、課長代理の役職以上の者には残業代が支払われていない・・事実だけでは、・・・管理監督者に当るとは認めることができない」として、課長代理は管理監督者に該当せず、他の社員と同様に振替休日を取得する権利があることを認めています。