A5: 被災者は、事故を起こしたとはいえ、就業後、通常と同様にマイカーで通勤し、その帰路に交通事故で負傷したものです。すなわち、「就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復する」ものであることは明らかですので、通勤災害と認められることは、ほぼ間違いないでしょう。
ただし、ここで1つ考えなければならない点は、事故の原因が被災者の居眠り運転による信号無視だったということです。こうした本人の過失による災害(業務災害及び通勤災害)については、労災保健法では支給制限の規定を設けています。
支給制限が行われるのは、次の①〜③に該当する場合です。
- ①労働者が故意に負傷、疾病、障害もしくは死亡またはその直接の原因となった事故を生じさせたとき。
- ②労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により負傷、疾病、障害もしくは死亡もし
くはこれらの原因となった事故を生じさせたとき。
- ③正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより負傷、疾病もしくは障害の
程度を増進させ、もしくはその回復を妨げたとき。
①は、労働者が結果の発生を意図した故意によって事故を発生させた場合で、一切の保険給付は行われません。言い換えれば、こうしたケースについては、業務上災害あるいは通勤災害とは認めないということです。具体例としては、労働者の自殺がこれに該当します。
②の「故意の犯罪行為」とは、事故の発生を意図した故意はないが、その原因となる犯罪行為が故意によるものをいうとされ、また「重大な過失」とは、事故発生の直接の原因となった行為が労働基準法や鉱山保安法、道路交通法などの法令上の危害防止に関する規定で、罰則の付されているものに違反すると認められる場合について適用がなされます。
この場合、保険給付の都度、所定給付額の30%の割合で支給が制限されます。その制限の対象となるのは、休業補償給付または休業給付、障害補償給付または障害給付(再発にかかるものは除かれます)です。
支給制限の期間は、休業補償給付または休業給付については支給事由の存する期間で、障害保障給付または障害給付については当該障害の原因となった傷害について療養を開始した日の翌日から起算して、3年以内の期間において支給事由の存する期間となっています。
③の規定は、労働者に適正な診療を受けさせることを目的とするものですから、あくまで労働者の療養指導が第一とされています。
そこで今回のケースですが、事故の原因が被災者の居眠り運転による信号無視ということですので、前記②に該当するものといえます。
したがって、ご質問のケースは、通勤災害に認定されることになると思われますが、休業給付及び障害給付については、30%減額支給される可能性が高いでしょう。
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