人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼健康保険(第三者行為災害)について

Q1: 当社の従業員が、交通事故に巻き込まれて負傷し、現在入院中です(労災・通災ではない)。交通事故の場合、治療代などについては健康保険がきかないと聞いたことありますが、健康保険で治療をうけることはできないのでしょうか?

 

Q1: 当社の従業員が、交通事故に巻き込まれて負傷し、現在入院中です(労災・通災ではない)。交通事故の場合、治療代などについては健康保険がきかないと聞いたことありますが、健康保険で治療をうけることはできないのでしょうか?

A1: 健康保険は、被保険者および被扶養者(被保険者等)の業務外の事由による疾病、負傷、死亡、出産について保険給付を行うことを目的にしていますので、交通事故により負傷した場合でも保険給付が受けられます。
しかし、交通事故の場合、加害者が被保険者に直接治療代等を支払う場合や自動車賠償責任保険から保険金を受ける場合もありますので、健康保険で保険給付を受けるかどうかは、本人の意思によります。

健康保険で保険給付を受ける場合は、保険者に対して「第三者の行為による傷病届」に自動車事故証明書等の必要な書類を添えて社会保険事務所または健康保険組合に提出しなければなりません。
保険者が、交通事故等の第三者行為が原因の事故について保険給付を行ったときは、保険者が被保険者等に代わって保険給付の範囲内で被保険者等の有する損害賠償請求権を取得します。


これは、第三者の行為によって生じた負傷や病気の治療代等は、本来、加害者が被害者に支払うべきものであり、保険者が保険給付を行えば、被保険者等にとっては実際には損害が補てんされたことになり、保険給付の限度において損害賠償を受ける必要がなくなり、この場合に第三者から損害賠償を受けるとすれば二重の補てんになってしまうからです。また、第三者から損害賠償を受けないことになれば、加害者経済的な負担がなくなってしまうため、このような不合理をなくすために、保険者が保険給付の範囲内で、損害賠償請求権を代位取得し、加害者または保険会社等に保険給付相当分を請求することになります。

健康保険法には「同一の事由ですでに第三者から損害賠償を受けたときは、保険者はその価額の限度で保険給付を行う義務が免除される。」という免責の規定があります。免責の範囲は現に支払われた賠償額の限度内で、その賠償額のうち当該保険給付と同一性質のものに限られます。損害賠償を受けること等により損害賠償請求権を消滅させた後は、その額の限度で保険給付は行われません。また、第三者に対して有する損害賠償請求権の全部を放棄または免除した場合は、それ以後の当該保険給付が行われなくなりますので、示談等は慎重に行ってください。