人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼労働保険について

Q1: 従業員を一人でも採用したら、すぐ労働保険に加入しなければならないということですが、この労働保険とはどんな保険ですか?

Q2: 昨年度(平成18年度)の確定保険料の計算のとき、「一般拠出金」が附加されて納付を義務付けられましたが、これはなぜでしょうか?

Q3: 労働保険には、一元適用事業と二元適用事業とがあるそうですが、これはどのような事業を言いますか?

Q4: 新規適用の場合、2年前までに遡及して加入手続きをしなければなりませんが、手続の日から加入することは出来ないのですか?

Q5: 今度、別の市区町村に支店を出し、数名の従業員を採用しました。本店(本社)管轄の職安に取得届を提出してもいいのでしょうか?

 

Q1: 従業員を一人でも採用したら、すぐ労働保険に加入しなければならないということですが、この労働保険とはどんな保険ですか?

A1:  労働保険とは、「雇用保険」と「労災保険」の2つを合わせたものをいいます。
「雇用保険」は被保険者が失業したとき失業給付金を支給することはもちろん、適用事業主にも、雇用の安定等を図るための給付金、奨励金、助成金等の制度があります(公共職業安定所扱)。
「労災保険」は労働者が業務上又通勤のよりけがをした場合等に給付されるものです。(労働基準監督署扱)。
この「労働保険」は、労働者と事業主の方々の雇用の安定や災害の防止を図るためになくてはならない保険で、必ず、一緒に加入することになっています。
自分の会社は失業者を出さないからとか、また作業中の事故が少ないからとかいって入ったり、入らなかったりする選択の余地のない、原則として強制加入の保険制度です。したがって、加入手続きをすることによって政府との間に保険関係が成立し、労働者や事業主が各種の給付や奨励金などを請求する権利が生まれることになります。
また、事業主には、当然、労働保険料の納付や諸届の提出等を行う義務が生ずることになります。なお、労働保険料のうち雇用保険の分については、本人(労働者)も負担しなければなりません。

 

Q2:  昨年度(平成18年度)の確定保険料の計算のとき、「一般拠出金」が附加されて納付を義務付けられましたが、これはなぜでしょうか?

A2:  これは「石綿による健康被害の救済に関する法律」によるもので、平成18年度分からその年度内に支払われた賃金の総額の千分の0.05の額を一般拠出金として労働保険料と一緒に申告納付するものとされています。
これは、原則として労働者を雇用しているすべての事業主が負担すべきものとされていますが、石綿とは関係ない事業を行っている事業主までなぜ一般拠出金を負担しなければならないのかという疑問も生じます。
しかし、石綿は、かつては建築関係を始めわが国のあらゆる産業に活用され、生活の様々な用途に供され、国民全体が石綿の活用に関わってきた事実に着目し、この結果の環境汚染による健康被害者の救済には、全事業主が当るべきだという考え方によります。従って、本来の労働保険料とは法律上の特質が異なりますが、今後も、労働保険料の申告納付のときに一緒に計算して納付すべきものとされています。

 

Q3: 労働保険には、一元適用事業と二元適用事業とがあるそうですが、これはどのような事業を言いますか?

A3:  労働保険は、元は別々であった労災保険と失業(雇用)保険の、保険料の算定徴収等を一元的に処理するようにしたものです。しかし建設の事業や農林水産の事業のように、事業の種類によっては、両保険の適用のしくみ等の著しい相違から一元化にすることが難しいものもあります。
これらのことから、保険料の算定徴収等を一元的に扱うことができる事業(大部分の事業がこれに属します。)を「一元適用事業」その他の事業を「二元適用事業」として分けて適用します。
なお、二元適用事業には、都道府県や市町村及びこれらに準ずるものの行う事業、港湾運送を行う事業、農林水産の事業、建設の事業があります。

 

Q4: 新規適用の場合、2年前までに遡及して加入手続きをしなければなりませんが、手続の日から加入することは出来ないのですか?

A4: 労働者を採用した場合、原則としてすべての労働保険に加入しなければなりませんが、労働者が5人未満の零細事業を中心に、いまだ未手続事業所が存在しています。
これら未手続事業所が労働保険に加入する場合は、原則として、労働者を雇用し適用事業となった日(最大限2年前の日の属する保険年度の初日)まで遡及しなければなりません。(この場合、雇用保険は、資格取得の確認が行われた日の2年前の日が被保険者の資格取得の日となります。)
しかし、事業主が自主的に労働保険の加入手続きを行った場合で、加入日について全労働者の同意があった場合に限り、手続を行った保険年度の初日から加入することもやむを得ないとされています。
ただし、労働保険事故(業務災害、通勤災害又は失業)の発生を契機に労働保険の加入手続きを行う事業所については、事情の如何を問わず、原則どおり2年前の日の属する保険年度の初日まで遡及しなければなりません。

 

Q5: 今度、別の市区町村に支店を出し、数名の従業員を採用しました。本店(本社)管轄の職安に取得届を提出してもいいのでしょうか?

A5:  労働保険は、事業(本店、支店、営業所など)を単位として適用されるのが原則です。
したがって、本店(本社)と異なる管轄の市区町村において事業所を設置すれば別の職業安定所(ハローワーク)の管轄になります。手続は、原則として、支店を管轄する労働基準監督署に労働保険関係成立届を提出し、労働保険料の概算額の申告納付を行い、支店を管轄する職業安定所(ハローワーク)で雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届を提出することになります。
ただし、支店、出張所等で特に規模が小さく事務能力からみて独立性がない場合で、本店ですべて事務処理がなされる事業所については、雇用保険では「非該当施設」となります。このような場合には、非該当施設(支店)を管轄する職業安定所(ハローワーク)に、「事業所非該当承認申請書」を提出して、承認を受けますと、本店管轄の職業安定所(ハローワーク)ですべて事務処理ができます。