人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼雇用保険(被保険者)について

Q1: 労働者でも、雇用保険の被保険者になる場合と、ならない場合があるようですが、被保険者になる者、ならない者の区別と、被保険者の種類について説明して下さい?

Q2: 一般被保険者であった従業員を引き続き雇い、その者が65歳以上にどのように変わりますか。何か手続きが必要ですか?

Q3: 65歳になった従業員を、条件を変更し再雇用することにした場合には、雇用保険の被保険者の資格も失いますか?

Q4: 季節的雇用や短期雇用を常態とする労働者は、短期雇用特例被保険者になる、ということですが 、これは具体的にはどのようなものですか。一般の被保険者との違いやその判断基準はどのようになっていますか?

Q5: 事業主と委任関係にある者は被保険者にはならないということですが、委任関係とはどのようなものですか。また、雇用保険の取扱いの上で請負契約との違いはありますか?

Q6: 区役所や職安などに長期のアルバイトに行っている人は、雇用保険の被保険者になるのでしょうか。その取扱いについて説明して下さい。

Q7: 工場長が会社の取締役になりました。従来の月給100万円に、役員報酬30万円が支給されます。この工場長の被保険者資格はどうなりますか。一般に、取締役が被保険者になる場合の扱いも併せて説明してください。

Q8: 当社は生命保険会社ですが、外務(外交)員が被保険者となる具体的な判断基準を教えて下さい。

Q9: 家事使用人であっても、働いて賃金を受けることに変りはないのに、被保険者にならないのはなぜですか?

Q10: 大学生や、予備校に行っている者を長期のアルバイト(常勤)として採用しました。被保険者となりますか?

Q11: 同居の親族は、他の従業員と全く同様に業務に従事していたとしても、被保険者にならないのでしょうか?

Q12: 法人で小売業をやっていますが、長男は取締役で通勤しています。二男は社員で同居しています。雇用保険の適用はどのような扱いになりますか?

Q13: 午前中3時間は事業所に勤務し、午後は仕事の資料材料を持ち帰り、家のPCで打ち込み作業を行い出来上がった資料を翌日持って来る、というパート社員がおります。賃金は、午前・午後の分を一括して月末に支払っておりますが、この場合、被保険者になりますか?

Q14: いずれ帰国することがわかっている外国人労働者でも雇用保険の被保険者としないといけないのですか?

Q15: 他の事業所とダブルワーク(かけもち)をする従業員は、両方の事業所で資格取得するのですか?

 

Q1: 労働者でも、雇用保険の被保険者になる場合と、ならない場合があるようですが、被保険者になる者、ならない者の区別と、被保険者の種類について説明して下さい?

A1: 労働者には、雇用保険の被保険者になる者と、ならない者があります。まず、被保険者にならない者には、当初から雇用保険法の適用を除外される者(「適用除外」という。)には、次のような者が挙げられます。

  • ①65歳に達した日以後新たに雇用された者

  • ②日雇労働被保険者とならない日雇労働者

  • ③4カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者

  • ④船員

  • ⑤公務員(これに準ずる者を含む。)

 また、この外に、週所定労働時間が20時間未満の者又は短時間就労者で雇用見込みが1年未満の者や昼間学生、法人の役員など、この雇用形態や就労内容等によって被保険者とならない者があります。これら以外の者は、本人の意思にかかわらず、すべて雇用保険の被保険者になります。
被保険者は、「一般被保険者」が原則ですが、年齢や雇用の形態に応じて、「高年齢継続被保険者」、「短期雇用特例被保険者」、「日雇労働被保険者」の4種類があります。平成19年9月までは、更に一般被保険者と高年齢継続被保険者に「短時間労働被保険者」がわかれていましたが、現在は、その区分はなくなり、「一般被保険者」に一本化されました。

 

Q2: 一般被保険者であった従業員を引き続き雇い、その者が65歳以上にどのように変わりますか。何か手続きが必要ですか?

A2:  65歳以上になると、「高年齢継続被保険者」になります。これは、同一の事業主に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後において雇用されている者であって、短期雇用特例被保険者又は日雇労働被保険者に該当しないものをいいます。
この高年齢継続被保険者に該当するか否かは、その者が離職したときに資格喪失届によって把握されますので、一般被保険者が、高年齢継続被保険者に該当するに至ったときにおいては、事務手続きを要しません。
なお、この者が失業した場合には、一般被保険者と異なり、高年齢求職者給付金が一時金として支給されます。

 

Q3: 65歳になった従業員を、条件を変更し再雇用することにした場合には、雇用保険の被保険者の資格も失いますか?

A3: すでに65歳になっている者を新規に雇用しても、現在では雇用保険の被保険者にはなりません。しかし、同じ事業所の就業規則等により、労働条件の変更はあっても引き続き勤務するのであれば、雇用保険の被保険者資格は「高年齢継続被保険者」としてそのまま継続します。
この場合、その事業所では「再雇用」として新たに労働契約書を作成することになり、法律的には別の雇用の形式にはなるのですが、雇用の実態は継続しているわけですから、雇用保険法ではこの場合新規雇用には扱わないことになっています。
従って、質問の従業員は被保険者の資格を失いませんし、再雇用だからといっても特別な手続きの必要はなく、そのままで。「高年齢継続被保険者」となります。

 

Q4: 季節的雇用や短期雇用を常態とする労働者は、短期雇用特例被保険者になる、ということですが 、これは具体的にはどのようなものですか。一般の被保険者との違いやその判断基準はどのようになっていますか?

A4:  労働者の多くは、期間を定めない労働契約のもとに、一般被保険者としての相当長期に被保険者であることが通例です。ところが、事業の性質や季節的要因などのため、1年未満の短い期間だけ繰り返し雇用される労働者もあり、一般被保険者と同じ給付を行うのは妥当ではないので、短期雇用特例被保険者として、特別の給付がされることになっています。
これには、①季節的に雇用される者、②短期の雇用に就くことを常態とする者の二つがあります。①には、季節的業務に期間を定めて雇用される者と季節的に入離職する者があります。②には、季節的に雇用される者以外の者で、過去の相当期間において1年未満の雇用に就くことを繰り返し、かつ、新たな雇用も1年未満の雇用である者をいいます。
なお、短期雇用特例被保険者が同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上となるに至ったときは、その日(「切替日」という。)から、原則として、一般被保険者又は高年齢継続被保険者になります。

 

Q5:事業主と委任関係にある者は被保険者にはならないということですが、委任関係とはどのようなものですか。また、雇用保険の取扱いの上で請負契約との違いはありますか?

A5:  雇用保険における雇用関係とは、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金の支払を受ける関係とされています。
一方、委任関係というのは、一定の事務処理の委任を内容とする契約関係で、処理方法は委任を受けた受任者に委され、そこには、支配従属関係はありませんし、独立の事業を行っているにすぎません。また委任契約上の報酬は賃金ではなく、雇用関係は成立しませんから、雇用保険が適用されることはありません。
請負契約は業務の完成時に報酬請求権の発生を原則とする点以外委任契約を同様で、業務遂行上、支配従属関係とはなりませんので、やはり雇用保険は適用されません。

 

Q6: 区役所や職安などに長期のアルバイトに行っている人は、雇用保険の被保険者になるのでしょうか。その取扱いについて説明して下さい。

A6:  国、都道府県、市町村及びその他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、雇用保険の失業給付の内容を超える諸給与があると認められる国の国家公務員退職手当法や都道府県、市町村等の退職条例等の適用を受ける者は、雇用保険法は適用されないとされています。したがって、採用された日から退職手当法等が適用される公務員等は、雇用保険の適用外とされています。
しかし、設問のような臨時職員については、雇用保険が適用されます。ところが、このような臨時職員でも、一定の要件に該当して、退職手当法上職員とみなされることとなった者については、退職手当法上職員とみなされた日から雇用保険は適用除外となりますので、その日に雇用保険の被保険者資格を喪失します。

 

Q7: 工場長が会社の取締役になりました。従来の月給100万円に、役員報酬30万円が支給されます。この工場長の被保険者資格はどうなりますか。一般に、取締役が被保険者になる場合の扱いも併せて説明してください。

A7: 工場長の仕事内容が従来の職務の範囲内にとどまり、業務執行権を持たないことを前提として被保険者となります。
取締役については、原則的に被保険者となれませんが例外的に通常労働者としての業務に従事しており(業務執行権を持たない)役員報酬の実態(役員報酬が給与額を超えていないこと)その他の労働条件から判断して労働者性が強いと思われる場合は、被保険者となる場合があります。しかし、専務取締役や常務取締役は業務執行権を有していると考えられるため被保険者となりません。
具体的手続きとしては兼務役員の実態証明書及び添付書類の提出を求められ、これによって被保険者資格の有無を判断することになります。

 

Q8: 当社は生命保険会社ですが、外務(外交)員が被保険者となる具体的な判断基準を教えて下さい。

A8: 外務員は、事業主と委任契約関係にある場合が多く、原則的には被保険者となりません。ただし、その職務の内容、服務の態様、賃金の算出方法等から総合的に判断して、特に雇用関係が明確であると認められ、事業主の支配拘束・指揮命令を受けている者は、被保険者となるとされています。 
生命保険の外務員は、通常、上の基準からみて被保険者にはならないとされますが、雇用関係が明確であると認められ、被保険者として扱う場合には、その生命保険会社の本社の所在地の都道府県で被保険者の範囲や賃金の範囲が決定されます。なお、各地の支店等を管轄する安定所では、この決定に従って、統一的に取扱うことになっています。
なお、損害保険や証券業の外務員は、通常雇用関係が存在することが多いので被保険者とされる場合が多いようです。

 

Q9: 家事使用人であっても、働いて賃金を受けることに変りはないのに、被保険者にならないのはなぜですか?

A9: 家事使用人というのは、いわゆる「お手伝いさん」のことで、もっぱら一般家庭で、生活上の世話のために使用される者をいいます。この家事使用人も、労働の対償として金銭による報酬を受けることに変わりはないのですが、被保険者となることはありません。
これは、雇用保険の被保険者は、「適用事業に雇用される労働者」ですから、事業に雇用される者でない鈍然たる家事使用人は、被保険者になりません。
しかし、診療所などの受付を主たる業務とする者が、たまたま、そこの経営者の家事である炊事や洗濯に従事させられることがあっても、これはあくまでも適用事業に雇用される労働者と認められますので、被保険者となります。

 

Q10: 大学生や、予備校に行っている者を長期のアルバイト(常勤)として採用しました。被保険者となりますか?

A10: 昼間学生(学校教育法第一条に規定される高校、高等専門学校、大学といったいわゆる「一条校」)は学業が本業であるため、雇用保険の加入要件を満たしていたとしても原則加入はできません(※労災保険は加入対象となります)。
また、一条校ではない専修学校や予備校などの各種学校等でも、昼間学生同様被保険者となりません。ただし、休学中の者や課程修了に一定の出席日数を要件としない学校、またそもそもの課程がすべて午前だけ或いは午後だけで設定されているような学校で長時間勤務が可能なような場合、または卒業前に就業し、そのまま勤務する者は、被保険者として扱われます。管轄のハローワークに尋ねて下さい。夜間学生・通信課程の学生は、雇用保険の加入要件を満たせば加入が必要となります。

 

Q11: 同居の親族は、他の従業員と全く同様に業務に従事していたとしても、被保険者にならないのでしょうか?

A11: 同居の親族は、原則として被保険者とされませんが、「同居の親族実態証明書」及び添付書類の確認により他の労働者と就労状態に労働者性があると確認できれば、被保険者資格を認める場合もあります。被保険者と認められる要件は、次のとおりです(すべて要件を満たすこと)。

  • 1)事業主の指揮命令にしたがっていること(事業主の申告に基づいて判断します)。
  • 2)就業の実態及び賃金の支払いが他の労働者と同様であること(「同居の親族実態証明書」及び添付書類あるいは事業主の申告によりすべての比較対象労働者との比較により判断します)。
  • 3)事業主と利益を一にする地位にないこと。

 

Q12: 法人で小売業をやっていますが、長男は取締役で通勤しています。二男は社員で同居しています。雇用保険の適用はどのような扱いになりますか?

A12:  長男については、まず兼務役員であるかどうかの確認を行います。兼務役員でない場合には、被保険者となりません。 兼務役員である場合には、「Q7」(取締役が被保険者となる場合)で述べたところに基づいて、被保険者資格の有無を判断します。
二男については、役員でないことを前提として、前項の「Q11」(同居の親族の取扱いについて)で述べたところに基づいて、被保険者資格の有無を判断します。この二男は、兼務役員でない役員の場合は当然、被保険者となりません。
また、兼務役員の場合であっても、役員報酬の支払いが僅かでもある場合には同居しているので、被保険者となりません。同居親族以外の兼務役員の場合と取扱いが異なりますので注意が必要です。

 

Q13: 午前中3時間は事業所に勤務し、午後は仕事の資料材料を持ち帰り、家のPCで打ち込み作業を行い出来上がった資料を翌日持って来る、というパート社員がおります。賃金は、午前・午後の分を一括して月末に支払っておりますが、この場合、被保険者になりますか?

A13:  雇用保険法における雇用関係とは、「労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金や給料の支払を受ける関係をいう」とされています。
この、「事業主の支配を受けて、その規律の下に」というのは、労働者が事業主から場所・施設・器材の提供を受けて、事業主の指揮監督の下に、一定の秩序に従って作業を行うことをいいます。
  従って、この設問のパート社員は、午後は仕事の資料を持ち帰るということからみますと。午後は勤務時間、作業場所等の拘束もなく、事業主の支配を受けてその規律の下に労務を提供しているとは解し難いので、被保険者とはならないと思われます。なお、このようなケースは、賃金台帳だけでは区別ができませんし、安定所で、具体的に相談して下さい。なお、この場合、午前中に4時間、週6日就労となると、1年以上の雇用見込みがあれば被保険者に該当することになります。

 

Q14: いずれ帰国することがわかっている外国人労働者でも雇用保険の被保険者としないといけないのですか?

A14:  雇用保険の加入要件を満たせば、離職時に帰国される等で雇用保険を受けないことが予想される場合であっても加入が必要です。これは外国人技能実習生も同様です。そして資格取得の手続きを行う際は、資格取得届の「備考」欄の国籍、在留資格などの各項目について漏れなく記入するようにしなければなりません。なお、外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された者は除きます。

 

Q15: 他の事業所とダブルワーク(かけもち)をする従業員は、両方の事業所で資格取得するのですか?

A15:  雇用保険は、一方の事業所でしか加入できません。主たる賃金を受けている事業所での加入となりますので、従業員ご本人に確認の上、取得手続きを行ってください。また、自営業を営んでいる方を雇用された場合や他社で役員等に就任されている場合も同様の考え方となります。
※雇用保険の加入を行った場合、失業後も他社勤務や自営を行っている場合は失業保険の受給ができない場合があります。
※労災保険は両方の事業所で加入対象となります。