人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼健康保険の給付について

Q1: 私傷病で休業し、従前の業務は服せないが、他の軽易な業務に服せる程度に回復し、軽作業の半日勤務に就いた場合、傷病手当金は、半額分、或いは賃金との差額分が支給されるのでしょうか?

Q2: 健康保険の給付にはどんなものがありますか?また、国民健康保険とは給付の内容が違うとききましたが、何が違うのでしょうか?

Q3: 医療費が高くなった場合には、一部払い戻してくれる「高額療養費」というものがあるということですが、どんなものですか?

Q4: 病気や怪我で、長期に休んだ場合は、健康保険から給付があると聞いています。どんなものですか?

Q5: 出産した場合には給付があると聞いています。また、扶養家族の出産でも支給されると聞いていますが、どんなものですか?

Q6: 産前産後休暇中は、会社からは給料はでないが、健康保険から給付があると言われました。どんな給付でどれだけ貰えるのですか?

Q7: 平成19年4月から退職後の給付の内容が変わったと聞いています。どのように変わったのですか?

Q1: 私傷病で休業し、従前の業務は服せないが、他の軽易な業務に服せる程度に回復し、軽作業の半日勤務に就いた場合、傷病手当金は、半額分、或いは賃金との差額分が支給されるのでしょうか?

A1: 健康保険の給付として傷病手当金が支給されるのは、療養のため「労務不能」で、しかもその間、会社から報酬(賃金)の支給がない場合です(ただし、その報酬の額が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます)。
この「労務不能」とはまったく労務に服さないことを言い、今までより軽い仕事についたり、医師の指示で半日出勤したような場合は、労務不能と認められず、傷病手当金は支給されません。
例え、軽作業を半日間行って支払われる賃金が通常の半額であっても、労務が可能であったということで傷病手当金は支給されないのです。そもそも支給対象ではないため、傷病手当金との差額支給も無いということです。

 

Q2: 健康保険の給付にはどんなものがありますか?また、国民健康保険とは給付の内容が違うとききましたが、何が違うのでしょうか?

A2: 健康保険の給付についての概要は、以下の通りとなります。

国民健康保険 政府管掌健康保険 給付の概要
被保険者 被保険者 被扶養者への 給付
療養の給付 健康保険証を提示して診察を受けると、医療費について一部のみを自己負担し、残りは保険から支払われるという、一般的に”健康保険を使う”というときの給付です。自己負担分は3割になります。
※3歳未満は2割、70歳以上は1割(一定以上所得者は3割)
入院時食事療養費 × 入院中の食事にかかる標準的な費用を除く部分を現物給付されます。
入院時生活療養費 × 70歳以上の人が療養病床への入院時に、食費と居住費(光熱水費)の標準負担額を除いた差額部分を現物給付されます。
訪問看護療養費 居宅で療養している人が、かかりつけの医師の指示に基づいて訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合に支給されます。
療養費 緊急時ややむを得ない理由や旅行先などで保険証を提示しないで治療を受けたときや、一定の補装具を購入したときなどに、医療費(保険単価に換算した額)が支給されます(一部負担金があります)。
高額療養費 1か月に支払った医療費が一定額を超え高額となったときに、その超えた額が支給されます。
移送費 重病人の入院・転院などの移送に車代がかかったとき、移送費が支給されます(支給基準を満たしていることが必要)。申請が必要です。
× 傷病手当金 × 業務外の病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられないときは、傷病手金が支給されます。 国民健康保険にはない給付です。
出産育児一時金 出産した場合に1児につき一定額が支給されます。 政府管掌給付では、現在35万円です。
× 出産手当金 × 出産のため会社を休み、事業主から報酬が受けられないときは出産手当金が支給されます。 国民健康保険にはない給付です。
埋葬料(埋葬費) 被保険者や被扶養者が死亡した場合に支給されます。平成18年10月より一律5万円になりました。

 

Q3: 医療費が高くなった場合には、一部払い戻してくれる「高額療養費」というものがあるということですが、どんなものですか?

A3: 高額療養費制度
健康保険には、長期入院や治療が長引く場合などで、1か月の医療費の自己負担額が高額となった場合に、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される「高額療養費制度」というものがあります(原則、申請することにより払い戻されます)。 1か月とは1日から末日までのことで、自己負担額とはレセプトごとに計算され、通院時と入院時に支払った費用なども、別々に限度額を超えている必要があります。 高額療養費制度では、以下の上限金額を超える部分の差額が払い戻されることになります。

条件 ひと月あたりの上限 1年の間に該当月が4回あった人の4回目以降の上限
生活保護の被保険者や市区町村民税非課税世帯など 35,400円 24,600円
標準報酬月額が53万円以上の被保険者およびその被扶養者 150,000円+(医療費−50,000円)×1%
(多数該当の場合83,400円)
77,700円
一般(上記2つに該当しない人) 80,100円+(医療費−267,000円)×1%
(多数該当の場合44,400円)
40,200円

※同一世帯内で、ひと月の自己負担額が21,000円以上の人が2人以上いる場合は、それぞれの医療費を合算して上記の表に当てはめます。 

※70歳未満の入院患者の方については、一定の申請をすることにより病院窓口での支払いを高額療養費の限度額までとすることができます。

 

●特定疾病療養
高額療養費制度の中には、さらに、下記の特定疾病療養の場合は、「特定疾病療養受療証」の交付を受けると、ひと月の自己負担額は10,000円となります(70歳未満の上位所得者の方で慢性腎不全の人工透析を実施している方の限度額は20,000円)。 なお、特定疾病療養受療証の申請には、医師の意見書を添える必要があります。
①人工腎臓を実施している慢性腎不全の患者
②血友病(先天性血液凝固因子障害)患者のうち第VIII因子障害、第IX因子障害の人
③後天性免疫不全症候群で血液製剤の投与によるHIV感染者のなかからの2次、3次感染の人

 

Q4: 病気や怪我で、長期に休んだ場合は、健康保険から給付があると聞いています。どんなものですか?

A4: 傷病手当金
被保険者が療養のために仕事を休み給料を受けられないなど、次の4つの条件を満たしたときは、一日当たり標準報酬月額の30分の1(標準報酬日額といいます)の6割が、支給開始日(待期後4日目 ※下記B参照)から最大1年6ヶ月支給されます。これを、「傷病手当金」といいます。
① 業務上災害及び通勤災害によらない病気・怪我で療養中であること・・・自宅療養や、健康保険を使えるのに、使用せず自費で診療を受けていても構いません。ただし、健康保険で診療をうけられない美容整形などでは支給されません。なお、業務上災害や通勤災害による病気や怪我で療養する場合は、労災保険からの給付があります。
② 労務不能であること・・・今までやっていた仕事に就けない場合をいいます。今までより軽い仕事についたり、医師の指示で半日出勤し今までと同じ仕事をするような場合は労務不能と認められません。
③ 連続4日以上仕事を休むこと・・・療養のため仕事を休んだ日が連続して3日間(待期)あったうえで、4日以上休んだ場合に、4日目から支給が開始されます。
④ 給料をうけられないこと・・・給料をうけていても傷病手当金より額のすくないときは、差額が支給されます。関連事項としてこちらを参照ください。

 

Q5: 出産した場合には給付があると聞いています。また、扶養家族の出産でも支給されると聞いていますが、どんなものですか?

A5: 出産育児一時金
被保険者や被扶養者が出産をしたとき、1児ごとに一定額が一時金として支給されます。これを「出産育児一時金」といいます。給付される金額は、現在、政府管掌健康保険の場合は一律35万円です。健康保険組合や地域などによって、金額がさらにプラスとなるところもあります。 多生児を出産したときは胎児数分だけ支給されますので、双子の場合は2倍、三つ子の場合は3倍になります。
また、死産や切迫流産の場合でも、妊娠月数4か月(85日)以上の場合は出産育児一時金が支給されます。 出産育児一時金の請求は出産後となりますが、他に以下のような二つの方法があります。三つのうちどれかを選択することになりますが、いずれの場合でも、支給される額は出産育児一時金と同額です。

●出産費貸付制度
出産用の資金として先に使いたい場合などに、出産予定日の1ヶ月前に申請することにより、28万円を限度に無利子で貸付を受けることができます。出産後は、貸与分を、本人が支給を受けるべき出産育児一時金から支払うこととなり、貸与額と出産育児一時金の差額は、本人に支給されます。

●出産育児一時金受取代理制度=出産育児一時金の事前申請(平成18年10月2日より)
出産用費用として直接使いたい場合などに、出産予定日の1ヶ月前に申請することにより、出産育児一時金を、医療機関を直接受け取り先として支給してもらうことができます。出産に係る費用が、35万円より少なければ差額は本人に支給されます。 具体的には、こちら(社会保険庁)を参考にして下さい。

 

Q6: 産前産後休暇中は、会社からは給料はでないが、健康保険から給付があると言われました。どんな給付でどれだけ貰えるのですか?

A6: 出産手当金
被保険者が出産のために仕事を休み給料を受けられないときは、一日当たり標準報酬月額の30分の1(=標準報酬日額といいます)の2/3が、産前産後の期間中、支給されます。これを、「出産手当金」といいます。 支給期間は、出産日(出産予定日より遅れた場合は、予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は、98日)から、出産日後56日までの間になります。出産日は、産前の期間にはいります。

注意したいのは、出産日が予定日より遅くなった場合には、もともとの予定日から数えて42日前=産前開始日、実際の出産日=産前終了日となりますので、42日を超えることになります。  なお、給料を受けていても出産手当金の額より少ないときは、差額が支給されます。

 

Q7: 平成19年4月から退職後の給付の内容が変わったと聞いています。どのように変わったのですか?

A7: 以下の二点が改正されました。
① 任意継続被保険者について、傷病手当金、出産手当金が支給されなくなりました。なお、任意継続被保険者であっても、平成19年4月1日前から、これらを受給していた者は、引き続き法定の受給期間について支給を受けることができます。ただし、支給額は、従前の「1日当たり標準報酬日額の6割」です。なお、これら二つ以外の給付は支給されます。
② 資格喪失後6ヶ月以内の被保険者の出産について、従前は出産手当金及び出産育児一時金が支給されましたが、出産育児一時金のみ支給されることになりました。

なお、勘違いが多いようですが、資格喪失前に1年以上被保険者であったものが、傷病手当金、出産手当金を受給していた場合または受給要件を満たしている場合は、従前と変わらず、資格喪失後の継続給付として、法定の受給期間について支給をうけることができます。この場合、平成19年4月1日からの支給額は、「1日当たり標準報酬日額の6割」から「1日当たり標準報酬日額の2/3」となります。
また、資格喪失後3ヶ月以内に保険者自身の死亡した場合、または、継続給付を受けている場合に死亡した場合若しくは受けなくなって3ヶ月以内に死亡した場合についての、埋葬料(費)についても従前と変わらず支給されます。