人事労務担当者のための労務相談Q&A



▼雇用保険(手続き)について

Q1: 雇用保険の取得や喪失の用紙はエンピツで書いてもいいのに、新規適用の書類は、ボールペンで書くようにいわれましたが、どのような違いがあるのでしょうか?

Q2: 個人で経営していた事業を株式会社などの法人に変更した場合、雇用保険ではどのような手続きが必要でしょうか?

Q3: 会社を分割した結果、新会社へ12月1日付で8名の社員が移りましたが、12月のボーナスを元の会社で支払うため、この8名の12月分の賃金も元の会社で支払いました。この8名の新会社での資格取得はいつになりますか?

Q4: 本社登記をしている場所と実際に事業を行っている場所が違う場合、どこで届出すればよいですか?

Q5: 個人から法人に変更したのですがどのような手続きが必要ですか?

Q6: 当社では、週10時間程度の従業員のみとなり、雇用保険対象者がいなくなりました。何か手続きは必要でしょうか?

Q7: 当社では事業は継続しますが、家族だけで、従業員は0人となりました。ただし、今後雇用見込みがあるので雇用保険の手続きは残しておきたいのですが可能ですか?

Q8: 退職者から離職票の請求がありません。離職証明書の作成はしなくてもいいですか?

Q9: 退職後、再就職先が決まっている従業員の離職証明書の作成はしなくてもいいですか?また、1年以内で自己都合退職したため受給資格がない従業員の離職証明書の作成はしなくてもいいですか?

 

Q1: 雇用保険の取得や喪失の用紙はエンピツで書いてもいいのに、新規適用の書類は、ボールペンで書くようにいわれましたが、どのような違いがあるのでしょうか?

A1:  小さなことのようですが、実務をやっている人には、大事な問題ですね。届出な申請書などの書類は、すべてボールペンやインクで記入するのが原則です。しかし、雇用保険関係事務にコンピュータ処理によるトータルシステムが実施され、各職業安定所(ハローワーク)には端末装置であるOCRが設置されました。
したがって、この帳票の記入は、原則的にはボールペンでも鉛筆でもよいのですが、鉛筆で記入してある場合には記入内容が誤っているときに消しゴムで消して正しい記入にし直し、OCRに読み取らせることができますので、鉛筆(HB程度)を使用する方が良いとされています。なお、鉛筆の使用は、OCRで読み取らせる部分である赤枠で構成されている部分ですので、OCRで読み取らせない書類や、帳票でも赤枠で構成されていない部分は、必ず、ボールペンで記入して提出しなければ受理されません。
なお、OCRで読みとらせる届出でも労働保険料申告書など、ボールペンを使用しなければならないものもあります。

 

Q2:  個人で経営していた事業を株式会社などの法人に変更した場合、雇用保険ではどのような手続きが必要でしょうか?

A2:  会社にするということは、法律上の人格を認められた組織体すなわち「法人」が経営主体となることですから、個人事業とは経営責任の帰属が異なることになります。
雇用保険では、

  • イ.単に会社の名称、組織に形式的変更がなされたにとどまる場合及び新事業主が旧事業主の権利義務を法令上包括継承する場合

  • ロ.新旧両事業の資本、資金、人事、事業の内容等に密接な関係があり、新旧両事業に実質的な同一性が認められる場合

等については、名称変更として処理することができます。
なお、同一事業主の解釈については、いろいろなケースがありますので、職業安定所(ハローワーク)までご相談ください。

 

Q3: 会社を分割した結果、新会社へ12月1日付で8名の社員が移りましたが、12月のボーナスを元の会社で支払うため、この8名の12月分の賃金も元の会社で支払いました。この8名の新会社での資格取得はいつになりますか?

A3:  出向元、出向先共に雇用保険の被保険者になれる用件を備えている場合、雇用保険の被保険者資格は、生計を維持するのに必要な主たる賃金の支払を受けている事業所において取得することになります。
よって、ご質問のケースについては、新会社での賃金の支払いの対象になる初日が資格取得日となります。
元雇用保険の被保険者資格は、生計を維持するのに必要な主たる賃金の支払を受けている事業所において取得することになります。
よって、ご質問のケースについては、新会社での賃金の支払いの対象になる初日が資格取得日となります。
元の会社で12月分の賃金が支払われたのであれば、新会社からの賃金支払は元の会社で支払われた12月分の賃金締切日の翌日になりますから、その日が新会社での資格取得日になります。従って、12月の賃金が12月31日までの分であれば、この8名の資格取得日は1月1日になります。

 

Q4:  本社登記をしている場所と実際に事業を行っている場所が違う場合、どこで届出すればよいですか?

A4: 実際に事業を行っている場所(事業所所在地)での届出となります。例えば自宅で本社登記することはよくありますが、その後、どこかに店舗を借りて、事業はそこで行っている場合は、その店舗所在地を管轄するハローワークで雇用保険適用事業所設置届を出すことになります。

 

Q5: 個人から法人に変更したのですがどのような手続きが必要ですか?

A5: 個人事業主が引き続き法人代表者となる場合は、名称変更手続きとなります。併せて、「同一事業主新旧事業実態証明書」の添付が必要となります。もし、個人事業主と法人代表者が相違する場合は、原則「個人事業所」の廃止手続きと「法人事業所」の新規設置手続きをすることになります。
ここで、注意点としては、個人から法人への変更の際に、雇用保険加入中の従業員を役員に就任させた場合は、原則としてその従業員は雇用保険「除外」となり、「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が必要となります。
ただし、役員であると同時に従業員としての身分を有し、「雇用関係」が認められる場合はこの限りではありません。兼務役員としての「兼務役員雇用実態証明書」等を提出することで、被保険者となります。

 

Q6: 当社では、週10時間程度の従業員のみとなり、雇用保険対象者がいなくなりました。何か手続きは必要でしょうか?

A6: 今後雇用見込みがある場合は、雇用保険の手続きは特に必要ありません。雇用見込みがない場合は「事業所廃止」の手続きが必要となります。
なお、労災保険については、引き続き対象労働者がいることになりますので、年度更新の際に、労災保険料にかかる申告と納付が継続となります。

 

Q7: 当社では事業は継続しますが、家族だけで、従業員は0人となりました。ただし、今後雇用見込みがあるので雇用保険の手続きは残しておきたいのですが可能ですか?

A7: 雇用見込みがあれば可能です。ただし、その場合は労働保険料の申告と納付を継続する必要があります。
一方、対象者がいないので、労働保険関係を解除し労働保険料を精算した場合は、雇用保険手続きも併せて廃止することとなります。一旦廃止すれば、再度対象となる従業員を雇い入れた際には、事業所設置からの手続きを行うこととなります。

 

Q8: 退職者から離職票の請求がありません。離職証明書の作成はしなくてもいいですか?

A8: 離職証明書は本人より不要との意思表示がある場合に限り作成不要ですが、それ以外は作成しなければならないことになっています。なお、離職者が59歳以上の場合は本人の希望の有無にかかわらず、必ず作成しなければなりません。

 

Q9: 退職後、再就職先が決まっている従業員の離職証明書の作成はしなくてもいいですか?また、1年以内で自己都合退職したため受給資格がない従業員の離職証明書の作成はしなくてもいいですか?

A9: 本人が不要であれば、作成不要ですが、再就職先を1年以内に離職した場合、複数の事業所に係る離職票による失業給付の受給資格が発生する場合がありますので作成しておくべきでしょう。
  また、1年未満での自己都合退職者についても、例えば、従業員の前職や今後就労される事業所など、複数の事業所に係る離職票を合算して失業給付の受給資格が発生する場合がありますので、作成しておくべきでしょう。